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【 糟糠の妻は堂より下さず 】 [中国]

【 糟糠の妻は堂より下さず 】

 

上海の都心にある豫園という庭園を歩いていて、ある建物でガイドさんから説明を受けました。

「これはあるお金持ちの正妻のための住居です。しかし玄関の段を下りて、奥方が地面に立つことはありませんでした」との説明です。昔、高貴な女性は纏足をしており、足が小さすぎて、地面を歩けなかった・・という事情もあるかも知れませんが、「糟糠の妻は堂より下さず」の教えの通り、大切にする女性には土を踏ませなかったということのようです。まあ、本当の糟糠の妻なら纏足はしていなかったと思いますが・・。

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この「糟糠の妻は堂より下さず」という言葉は、若い時に苦労させた妻、或いは一緒に苦労した妻は、成功してお金持ちになった後も特別に大切にしろよ・・という戒めですが、逆説で考えるオヒョウはこう思います。

「つまり、そういう戒めの言葉があるということは、実際には逆で、成功してお金持ちになったとたん、古女房をないがしろにして、若くて綺麗な女性に乗り換える手合いが多かったということだな」

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実際、その通りなのでしょう。中国では共産党の幹部になれば、愛人を持つのが半ば当たり前のようです。いろいろ嫌な噂話を聞きました。また私がいた昆山には台湾の企業から派遣されて、総経理や董事長を務める台湾人がたくさんいたのですが、その中には現地妻というかお妾さんを持っている人が多かったようです。

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中国のようなお妾さんはダメだとしても、古女房と離婚して、地位や財産にふさわしい若くて美しい女性と再婚する男は、洋の東西を問わず、たくさんいるみたいです。

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特にお金持ちになった後に、離婚と再婚をするのは、映画俳優やスポーツ選手に多くいます。成功した後に結婚する相手の美しい女性を、糟糠の妻の反対語として、トロフィーワイフと呼ぶそうです。成功の証ということでしょうか?糟糠の妻とは逆で、なんだか下品な言葉です。女性の人権を全く無視しています。

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話は変わりますが、実は、我が家に残る昔の写真を調べていたら、私の祖父と祖母の金婚式の写真が出てきました。

得三てる金婚式1.JPG

壬辰(みずのえたつ)の年と言いますから1952年、これは私が生まれるよりかなり前の写真です。撮影したのは、当時大学生だった従兄です。そしてその写真の裏に祖父がしたためた漢詩が載っていました。七言絶句の形で、私の駄作と違い、ちゃんと平仄が合っています。一読して、私の心に沁みる詩です。

得三てる金婚式2.JPG

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特に、最後の一行がいいと思います。

「辛酸に報いるに遅く、未だ堂に昇らず」 堂から下さずどころか、まだ堂に上げてもいない。

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私見ですが、漢詩は、起承転結のストーリーの他に、最初の一行で読者を惹きつけ、そして最後の一行でちゃんと締めくくる必要があります。この文はその体裁に則っており、特に最後の一行が心に残るのです。(身内の作品を褒めている訳で、ブログといえども、少しためらいますが)。

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豫園に限らず、中国の家屋には段階と順序があります。 まず堂に昇り、その後に室に入ることになります。論語では、孔子が子路の楽器演奏の腕前を評して、「いいところまで来ているのだが、今一歩だな」という意味で、以下の言葉を語っています。

 

由や堂に升れり。未だ室に入らざるなり

 

私の祖父の場合は、老妻に報いるに、まだその入り口にも入っていないということで、堂より下さずどころではない・・ということになります。 堂と言うほどの家でもなく、富貴になった訳でもない・・という自嘲もあります。その前段にある、室家というのは、家室とも書きますが、これは家屋の部屋のことではなく、家庭という意味です(詩経に登場します)。

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金婚式で糟糠の妻をねぎらい、労に報いていないことを恥じるだけの、たった28文字の文章ですが、それに共感できるのは、私も結婚してから随分時間が経過したからでしょう。 勿論、金婚式にはまだ随分時間がありますが、結婚してからもう30年以上経っています。 ええっと何年だったかな?

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まあいいや。とにかく私にも糟糠の妻はいます。でも私には金婚式に漢詩を作ったりする能力はありません。 妻を上げるための堂というかお屋敷もありません。そのあたりは祖父と同じです。 そして勿論、トロフィーワイフなどとは全く縁がありません。(羨ましいとも思いませんが)。 

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そして私の場合、単身赴任が長く続くと、妻への感謝の気持ちが希薄になるのでは?という懸念もありますが、そんなことはない・・と言いたい気持ちです。実際には、時々忘れますが・・。

 

ぬかみそも、トロフィーもなし、秋の暮れ


【 芸能人のvulnerability (バルネラビリティ) 】 [雑学]

【 芸能人vulnerability (バルネラビリティ) 】

今年は、週刊文春のスクープが何かと話題になります。その多くは芸能人のゴシップについてであり、文春砲などとも呼ばれています。 政治家がらみのスクープは、国益にも関係する重要事項といえますが、芸能人のスキャンダルなど、どうでもいいじゃないか・・と思います。しかし、そう思いながら、次回のスクープに期待してしまうのは、オヒョウもかなりゲスな男なのかも知れません。

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その文春砲で特に多いのが、芸能人の不倫(詰まり浮気)の曝露です。不思議なことに、不倫を曝露されても、謝罪会見で謝るだけで許され、芸能界に残れる人と、厳しく断罪され、芸能界を追放される人の2種類がいます。本人の立ち回りのうまさや、好感度その他の要因がありそうですが、よく分かりません。

あるいはもともと好感度が低く、その地位を失いかけていた人が、不倫報道が引き金となってその座を追われたということもありそうです。

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勿論、不倫だの浮気だのは悪いことに決まっていますが、昔はそれほど騒がれず、問題視されなかったように思います。それが芸能人生命を抹殺するほどの大罪になったのは、どうしてでしょうか?

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その昔、戦前まで遡れば、お妾さんを囲うのはそれほど反社会的な行動ではありませんでした。勿論、本妻にとっては不愉快なことに違いありませんが、妾を持つのは男の甲斐性とまで言われて、ポジティブに考える向きもありました。国民の生活の範たる皇室でもお妾さんは存在したのです。また庶民階級では花柳界の女性を相手にする限りにおいては、普通の浮気に比べて罪一等を免じるという風潮もあったようです。

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それが許されなくなったのは、第二次大戦後、女性の人権が尊重されるようになり、一夫多妻制など論外という風潮になったことが大きな理由だと思います。それを率先されたのは、皇室です。 戦前のことですが、謹厳さの象徴とも言うべき昭和天皇は妻妾制度を不潔として拒否されました。これには英国王ジョージ5世の影響もあった可能性があります。そして売春禁止法の施行とともに婚姻関係以外の性的関係をタブーとするピューリタン的な考え方が普及しました。なぜか日本人はお行儀がよくなったのです。

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しかし、戦前派の人達には、その考え方はなかなか通用しないようです。名宰相吉田茂には妻を亡くした後に、こりんさんというお妾さんがいたことは有名ですし、田中角栄にも越山会の女王と呼ばれた愛人がいたことは有名です。住友の名経営者 日向方斎にも愛人がいました。当時、そのことについて怪しからん!とするマスコミもいませんでした。

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時代の流れが変わったのは、神楽坂の芸者を口説こうとしてそれを曝露された、総理大臣の宇野宗佑あたりからで、マスコミは、非難したり失脚させたい政治家がいる場合に、その非難の引き金として、女性関係を利用するようになりました。

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一方、マスコミが支持する革新政党の場合は、追求が甘く、多くは不問に付されます。

愛人とは言いませんが、管直人や細野豪志の不倫は、写真週刊誌がスキャンダルとして取り上げましたが、大きな問題にはなっていません。

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そして芸能人の場合は、政治家よりもお行儀が悪くても許される商売でした。特にお笑い芸人は、女性スキャンダルも芸の肥やし・・という感覚で非常に寛容な業界だったはずです。それがどうしたことか、落語家が愛人を囲っていた・・ということで、記者会見を開いて平身低頭謝っています。お笑い芸人ではありませんが、大看板の歌舞伎俳優も不倫関係を謝っています(相手は芸者さんでしたが)。

逆に手際よく謝らないと、バッシングの嵐で芸能界を追放されてしまいます。

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なぜこうなったのか?なぜ、芸能人はバッシングを受け易くなったのか?いじめられやすさ(Vulnerability)が増大したのか?

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理由のひとつは芸能人の地位が上がったからです。 昔はへりくだってバカバカしい話や仕草で笑いを取っていた人達が、いつの間にか、教養人だったり、文化人だったり、果ては知識人のように扱われるようになり、人々にお説教を垂れたりするようになりました。 犯人はTVのバラエティ番組だと思います。 私などは、なぜ漫才師に世界情勢や国政の行方について、教えてもらわなければならないのか、よく理解できませんが・・・・。

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いずれにしても、社会的地位が上がり、人々が尊敬の目で見るようになると、そこに求められる倫理観や、公徳心も高いものになります。今までは多めに見られただらしない異性関係も、糾弾の対象になります。その変化あるいはギャップに気付かない芸能人が、これまでは大目に見られていたことでも叩かれることになり、うろたえることになります。

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不倫や浮気はいけないけれど、芸能人をやたらに持ち上げる、この倒錯した文化は健全なのか? 政治家や芸能人にピューリタン的な、お行儀の良さを求める背景には、まねのできない庶民のやっかみもあるのではないか? と考えたところで、外国はどうかな?と考えてみます。

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外国でも有名人のスキャンダル(特に男女関係のゴシップ)はタブロイド紙の1面を飾り、人々の関心の的です。 しかし、日本のように「水に落ちた犬は叩け」的に袋叩きにするリンチは無いみたいです。 スキャンダルがばれた時の対応も、威厳のある人は威厳ある態度で、そして威厳の無い人はそれなりの態度で、答えます。

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かつてフランスの大統領ミッテランに愛人と隠し子がいたことが明らかになり、マスコミが注目したことがあります。

それについて記者に質問されたミッテランは、

「ああ、いるよ。 だがそれがどうしたというのだね?」と涼しい顔で答えたとのことです。

歌舞伎の中村橋之助も、

「ああ、愛人ならいるよ。 だがそれがどうしたというのだね?」とでも答えれば良かったのです。

それなら、私も「いよぅ、成駒屋!」と声をかけて、彼のファンになったのですが・・・。


【 ルパシカ その2 】 [雑学]

【 ルパシカ その2 】

 

ある工業製品、とりわけ耐久消費財について、ある瞬間時点でその性能・品質を評価し、優劣をつけると同時に購入の適否について断じるのは適当か否か? これは難しい問題です。鉄鋼の例を挙げます。

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今から30年ほど前、ポルシェが、耐穴あき錆保証10年保証を打ち出しました。背景事情を説明しますと、以下の通りです。 その前から北欧や北米などの高緯度・寒冷地では冬に道路への融雪材撒布を始めました。路面凍結や降雪時のスリップ防止が目的です。融雪材とは、水の凝固点効果を狙うもので、塩化ナトリウムや塩化カルシウムが主体です。当然、スプラッシュがかかる、自動車のフェンダーやドア、サイドシルといった部品は錆びて短期間の内に孔が空きます。

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そこで耐久性を誇る高級車であるポルシェは、ボディに溶融亜鉛メッキ鋼板(GI)を採用し、亜鉛による犠牲防食効果を利用して穴あき錆発生までの時間を稼ぐことにしたのです。他の自動車メーカーは、全て普通の塗装鋼板を採用していた時代です。

もし、その時点で「暮らしの手帖」が商品テストを行い、自動車のボディの錆びやすさを比較・評価していたならどういう結果になったでしょうか?

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おそらく「ポルシェは合格、国産の全ての自動車は不合格。国産車を買うことはお勧めできません。 皆さん、ポルシェを買いましょう・・」という結論になったはずです。 そんな結論が果たして意味を持つのか?

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自動車用鋼板にメッキ鋼板を用いるのは簡単なようで非常に難しいことです。

ポルシェのような単純なGI鋼板を使う会社は、今は少数です。 GIのメッキ後に合金化処理を行うGAが一般的ですが、電気メッキ鋼板のEGEGでも亜鉛にニッケルを加えて結晶粒を揃えたSZ、クロメート処理をした鋼板等、様々です。GAの上にさらに鉄をフラッシュメッキしたFZという鋼板まであります。

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自動車用メッキ鋼板に多くの種類があるのは、会社ごとに思想が違うことや、製造する車体の形状など、いろいろな事情があるからです。 メッキ厚は厚ければ厚いほど防食性能は上がりますが、プレス成形性は劣化しますし、スポット溶接性も劣化します。メッキ膜の剥離の可能性もまします。 また塗装はメッキしない鋼板の方がきれいにできます。

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したがって、鋼板メーカーは片面だけをメッキしたり、逆に片側のメッキを落としたり、さまざまに工夫しました。ポルシェが簡単に提案した自動車鋼板のメッキ鋼板化というのは、簡単な技術課題ではなかったのです。ポルシェの場合、製造台数も少ない高級車ですから、11台修正や手入れができますが、量産車ではそうはいきません。

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もし、その背景を知らずして、自動車の耐食性能の試験を行われても困ります。TVドラマでは、家電である電気洗濯機の例が出されていますが、こちらはEGという種類のメッキ鋼板が多く使われます。 錆びやすいとされた製品は、どの材料を使い、またメッキがカバーしない切断面の処理をどうしているか、水滴が残存しない構造になっていないか・・などを確認しなければ意味がありません。

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電気洗濯機の問題では、アカバネの洗濯機がメッキのネジを使っていることを問題視しています。 これが私には理解できません。 ネジの表面には強い剪断応力と圧縮応力がかかり、普通のメッキでは対応できません。通常使われているのはクロメート処理をしたネジとステンレス鋼のネジです。 両者は図面段階でどちらを使用するか規定されますし、色が違うので外観上の違いも明らかです。 値段はステンレスの方がやや高い設定になっています。

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本当にメッキのネジが使われていたのかな? 少なくともJIS規格には無いはずです。真鍮にごまかすためにメッキしていたといいますが、それは何色のメッキだったのでしょうか?

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さらに理解に苦しむのは、これが危険だ・・という指摘です。メッキが剥がれると、そこが錆び、漏電の危険性がある・・という指摘です。 金属のネジはメッキだろうが、真鍮だろうが、よく電気を通します。むしろ鉄錆びの方が電気を通しません。だから絶縁性が増すというのなら分かりますが、TVの脚本はアベコベです。それに、真鍮が錆びないのは事実ですが、真鍮のネジで鋼板をとめると、異種金属の接合による電池が発生し、鉄の方で腐食が進行します。むしろ鉄のネジの方が、腐食が遅れます。

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さらに理解できないのは、漏電の結果です。TVでは唐沢が漏電すれば、発熱し高温になる危険がある・・と言っていますが、漏電で最も恐れるべきは感電です。アースの不完全な洗濯機の濡れた箇所に触れ、主婦が感電死するという事故が、電気洗濯機の普及期に多発したのです。 そして前回も触れましたが、「暮らしの手帖」はこの問題の糾弾に於いて、全く無力だったのです。

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このTVドラマは一見、技術的な詳細を解説するようでいて、全くトンチンカンな説明をしています。少しだけとはいえ安全工学をかじった者としては、どうにも引っかかります。軽々しく安全の問題に言及して欲しくない・・というのが本音です。

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安全は全てに優先しますし、絶対に重視しなければならないものですが、社会的な事情との関連で考えることも必要です。 例えば、駅のホームの安全性を、「暮らしの手帖」(もとい「あなたの暮らし」)が検証したとしましょう。

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当然ながらホームドアの無いホームは危険と言うことになります。一時、総武本線の新小岩駅では通過する成田エクスプレスや特急電車に飛び込むのが流行りました。

雑誌が、事故発生率を議論すれば、新小岩駅は危険だから利用するのを止めましょう・・ということになります。 全ての駅にホームドアが設置されたつくばエクスプレスは安全ですから、この電車を利用しましょう・・なんて結論になりますが、その結論が利用者にとってナンセンスなのは、言うまでもありません。

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ホームドアには、停車する列車や電車のドアの間隔がまちまちだと設置しづらい問題があります。特に首都圏の私鉄(民鉄)の場合、地下鉄、更には地下鉄を介して都心の反対側の私鉄と相互乗り入れするのが普通であり、ドアの数も違えば、車輌の長さも違ったりします。

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それに、プラットホームの土台の強度が不足し、ホームドアを設置できない場合もあります。それならプラットホーム全体を作り直す大工事になりますし、駅によってはホームが狭く、ホームドアの幅を確保できない場合もあります。

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ホームドアを設置しても、線路の曲率が大きく電車とホームの隙間が大きな飯田橋駅のような場合は、問題解決とは言えません。車輌を短くするなどの別の対策が必要になります。

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駅のホームの問題一つをとっても安全性を高めるには、お金の問題だけでなく、技術面の課題解決が必要です。 話を元に戻しますが、工業製品の作り手ではない雑誌編集者が、具体的な改善提案も示さず「あなた達にメーカーとしての矜持は無いのか?」と“上から目線”で言うのはどうでしょうか? そのような場合には、海外の現地法人で、本社からの無理な指示に対して、よく言われた言葉“OKY”と答えるしかありません。

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OKYとは”Omae ga Kite Yattemiro”の頭文字です。 出版社の編集者が本当に優れた製品を設計してから、他社製品を評価・批判するのが筋ではないでしょうか?

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話題が、安全の話に及ぶとなると、私は言いたい事がたくさんあるので、きりがありません。 その辺りの話は、また稿を改めて書きたいと思います。


【 ルパシカ その1 】 [雑学]

【 ルパシカ その1 】

朝の連続TVドラマをブログに取り上げるのは、あまり気が進みません。なぜなら、多くの優秀なブロガーやツィッター利用者が、秀逸のドラマ評論をインターネット上に開示されているので、私ごときがコメントすることなど全く無いからです。

特にエキレビに書かれている木俣冬さんのエッセイは秀逸です。

http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20160913/E1473697713757.html

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それらの評論と、笑うオヒョウを比較されると、私のブログの幼稚さが思い知らされ、落ち込みます。それでも敢えて今回は書きます。 NHKの「とと姉ちゃん」には全くじれったくなるのです。

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なぜ、主人公 小橋常子と星野は結ばれないのか? あんなにお似合いのカップルは無いじゃないか?二人とも愛し合っているし、二人の子供も常子を慕っているし、周囲の全ての人々は、二人を暖かく見守り、二人が結ばれることを願っています。反対する人、邪魔をする人は一人もいないし、障害なんてどこにもありません。

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子供のいる男やもめが再婚する場合、最大の問題は、継母と継子の関係がうまくいくかです。 でも幼い子供達にはやっぱり母親がいた方がいい。 その難しい条件にぴったりと当て嵌まる女性など滅多にいないのが現実の世界なのに、ドラマの世界にはいます。それなのに、二人は結ばれず、星野は名古屋に転勤します。

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視聴者の誰もが、ふたりの結婚を期待しますが、それがうまくいかないのです。この種のフラストレーションが溜まる恋愛ドラマを、私は「君の名は」コンプレックスと呼びます。勿論、新海誠の作品ではなく、ドラマの中で常にすれ違いが続いた菊田一夫作品の方です。

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モデルとなった大橋鎮子女史は生涯独身だったことは知られていますから、予想はつくのですが、常子と星野が結ばれないことについては、何で?という疑問が残ります。 昭和の時代、働く女性は結婚か仕事かの二者択一を迫られる理不尽な環境にあったのだ・・と訴えたいのか、それとも主人公の生き甲斐である雑誌の発行は、恋愛や結婚にも優るのだ・・と訴えたいのか?

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しかし、小生、主人公の小橋常子が静かに泣くところを見るのが辛いのです。高畑充希はほぼ無表情のまま涙を流すのですが、彼女は泣く演技が上手な女優だと思います。

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一方で唐沢寿明の花山・・・これはどうもいけません。 個性的なキャラクターを必死に演じているのでしょうが、どうも薄っぺらに思えてなりません。 上に立つ男性が、笑顔を見せず、常にどなっていれば、大物に見える・・・訳ではありません。

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主人公の常子が、商品テストを続けると宣言した時に、唐沢は「鳥肌が立った」と、その感動ぶりを説明しますが、これが最初に引っかかります。

今でこそ、「鳥肌が立つ」というのは、感動した時、魂を揺さぶられた時のポジティブな意味でも使われますが、以前は、おぞましいものを見た時、恐ろしい経験をした時のおののく様子を表す言葉でした。例えば、大きなクモがゴキブリを食べているところを目撃した時の形容詞です。ちなみに関西では鳥肌ではなくサブイボと表現します。

はるき悦巳の漫画「じゃりン子チエ」では、ガラスを爪で引っ掻く音を、サブイボの出る音・・と表現しています。

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「とと姉ちゃん」の時代には、「鳥肌が立つ」とは不快な事を形容するネガティブな意味しかなかったのに、脚本家も唐沢もそのことには無頓着です。誰も気づかないのか?

そして、もっと無頓着なのは、彼が着るルパシカです。これには何の意味があるのか?

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モデルとなった花森安治に奇妙な趣味があり、スカートを着用したり、女性のヘアスタイルをしたりというのは有名な逸話ですが、それが女性読者の心理を研究するためだったのか、それとも倒錯的な趣味によるものかは知りません。しかし唐沢寿明に毎回スカートを穿かせるわけにも行かず、スカート着用は1回だけで、それ以外はなるべく奇抜な衣装を・・ということで、ロシアのルパシカを着せたりしています。しかしこれはどうなのか?

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ルパシカの着用には他の服装とは違う意味があります。木俣さんは確かトルストイ主義者・という言い方をしていましたが、その通りです。ロシア文学にあこがれたり、マルクス・レーニン主義に共鳴した人達の、一種の記号がルパシカです。

昭和30年代、それらの人達は、ウクレレよりバラライカを好み、歌声喫茶ではロシア民謡を歌い、そしてサモワールで沸かしたお湯でジャムの入ったお茶を飲んでいました。 加藤登紀子が若かった頃です。

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戦前の話ですが、劇作家の菊田一夫がルパシカを愛用していたところ、先輩の北條秀司(だったかサトウ・ハチローだったか)に、「服装ばっかり気取っていてもだめだ。ちゃんとした考えが無ければ意味がない」と諭され、目が覚めた・・と語っています。

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つまり、明確な思想的背景や思い入れもなしに、ルパシカだけ着用するのは不可・・ということです。花森安治に、その種の(マルクス・レーニン主義に傾倒する)思想や、ロシア文化を愛する考えがあったとは聞いていません。

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NHKの演出家がルパシカを選んだ理由は何なのか? 理解できません。

そして、もっと言えば、マスコミの姿勢が問題です。常子は「あなたの暮らし」は、何者かと戦う・・と主張します。 おそらくは不良品を世の中に出す悪徳メーカーと戦うというものでしょうが、それは危なくないでしょうか?

マスコミが、何かと戦ったり、正義を振りかざすのは甚だ危ういのです。

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かつて毎日新聞は、中国大陸で100人斬りを争う2人の将校を英雄として報道しました。少しでも鉄を知る人なら、1振の日本刀で100人を斬れる訳はないと思うのですが・・・。この捏造記事の結果、その2人の将校だけでなく、日本人全体が野蛮な民族としてレッテルを貼られ、中国の国民にも無用な悲しみと屈辱感をもたらすことになりました。 朝日新聞は、日本軍が韓国済州島で娘狩りを行い、何万人もの若い女性を強制的に従軍慰安婦にしたという捏造記事をだしました。その一方で、北朝鮮による拉致を否定し、カンボジアでのポルポトの虐殺を否定しました。中国の文化大革命をいまだに礼賛している新聞です。 どの記事も正義感旺盛な記者が書いたものです。

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ペンの力で悪と戦い正義を貫く と新聞やその他のマスコミが主張する時に限って、この種の捏造記事が登場します。 「あなたの暮らし」は自分達の商品試験結果は正しいと胸を張りますが、その試験方法は全く杜撰です。 大量の工業製品から抜き取りで試験品を選び、複数の集団の差異の有無を検定するには、F検定などの手続きを行いますが、サンプリングすべき個体数などは数学的に決められます。

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何万台も製造される電気製品の評価試験をたった数台のサンプルで評価することは可能なのか? そこを押さえておかなければ、得られた結果の尤もらしさ(尤度)が保証されません。また工業製品の品質や性能には、個体差に基づくものと、設計や製造方法に起因し全個体に共通のものの2種類があります。それをどう判別すべきか?

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その辺りの議論が「とと姉ちゃん」のドラマでは欠落していますが、本当の「暮らしの手帖」でも欠落していました。本物の花森安治も多分、統計学について学んでいなかったものと思います。 

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しかし、「暮らしの手帖」の本当の問題は別のところにあります。仮に試験結果に誤りがなかったとしても、それをそのまま開示することが正義であり、正しいとは限りません。社会的背景を考慮して判断してこそ、はじめて正しい記事となります。

一体、何を言いたいのかって? それについては、次回、ご説明いたします。


【 B-737 AEW&C 】 [航空]

【 B-737 AEW&C 】

 

ちょうど北朝鮮が核実験をする前々日、私は韓国から戻ってきました。釜山の金海空港を日本へ向けて飛び立とうとした時、誘導路の前に割り込むようにして奇妙な飛行機が現れ、平行する隣の滑走路から飛び立ちました。

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飛行機の大きさ、オヒョウが乗るボーイング737と同じですが、胴体の上にトサカというかチョン髷というか、奇妙な板状のものを載せています。

「ああ、これがB-737 AEW&C(ピースアイ)機なのか」と気付きました。噂には聞いていましたが、実物を見るのは初めてです。

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AEWCは早期警戒管制機と訳されますが、空飛ぶレーダー兼作戦司令室です。米国のRC-135E-3及び日本のE-767は機体の上に、大きな円盤状のレーダーを据えていますが、オーストラリアや韓国の空軍が持つE-737の場合は、円盤状のレーダーではなく、MESAと呼ばれるレーダーの大きな板状のアンテナを載せています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0737_AEW%26C

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この奇妙な飛行機が飛び立つのを見て、ちょっと嫌な予感がしました。「これはどういうことなのか?」。韓国滞在中、韓国のTVは、北朝鮮が相次いでミサイルを発射したニュース、杭州のG20のニュース、そしてHANJINという韓国の大手海運会社の経営破綻のニュースで持ちきりでした。だから弾道ミサイルの発射の監視に飛び立ったのか?と思ったのですが、少し変です。

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北朝鮮が発射する弾道ミサイルには、陸上型(固定式と移動式があります)と、潜水艦発射型の2種類がありますが、今、注目されているのは潜水艦発射型です。もし次の発射に備えて、潜水艦を監視するなら、B-737 AEW&Cではなく、対潜哨戒機であるP-3Cの方が適しています。それにハイテクの現代とはいえ、洋上を飛んで探索するなら、日没が迫った時刻よりも明るい日中の方が適しているのは間違いありません。

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これは、潜水艦発射型の弾道ミサイル発射の兆候を探るための飛行ではないな・・・?

早期警戒管制機が得意とするのは、空中を飛ぶ物体と、地上の施設、そして海上にある水上艦艇の探索です。基本的に地上のレーダーでも海上のイージス艦でも同じ探索ができますが、高い上空を飛ぶ方が、遠くまで探索できます。当たり前ですが、地球は丸く、より高い位置からの方が、遠くまで見渡せるのです。

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B-737 AEW&Cでは、高度9000m600Km先の施設や物体を把握できるはずです。

それなら北朝鮮に領空に入らなくても、かなり内陸の地域までレーダーで探索することができます。 つまり、韓国のB-737 AEW&C機は、潜水艦発射ミサイルを追いかけていたのではなく、陸上の何かを探っていたのかも知れません。 それはミサイルではなく核実験だったのかも・・・。

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北朝鮮の核実験は、秘密裏に行われるのが普通ですが、周辺諸国にはバレバレです。 だから、米国などは、WC-135と呼ばれる核実験調査専門の偵察機が事前に本国から沖縄の嘉手納基地がグアムに飛来して待ち構えています。 今回の核実験でWC-135が極東に飛来していたかは不明ですが、日本は上空の大気の塵を収集できるT-4型練習機がすぐに離陸しています。どうやら北朝鮮の核実験は事前に予想されていたみたいです。 

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SIGINTと呼ばれる情報収集には、大別してELINT(レーダーなどでの電波情報収集)、COMINT(音声会話やデータ通信傍受)の2種類があり、それぞれ、専門の航空機を用います。 特にELINT機と呼ばれる情報収集機は奇妙な形のアンテナを付けた奇抜な恰好の飛行機が多く、滑走路にどんな格好の飛行機がいるか・・・で、今どんな事態になっているか、分かるのです。 前述の繰り返しになりますが、もし嘉手納基地やグアムの基地にWC-135がいれば、それだけで北朝鮮が核実験をするか、あるいはした事が分かるのです。

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今の日本は専守防衛が前提ですから、自衛隊が持つ、敵を攻撃するための武器はあまり充実していません。その分、逆に情報収集や哨戒機能については装備が充実しています。米国も日本の自衛隊にはインテリジェンス機能(つまり情報収集機能)を期待しています。地理的にみて極東にある日本と韓国が情報を取る上で有利であり、それを米軍が活用するという構図です。

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その是非はともかく、日本は斥候としては優秀なようです。その能力は公開されませんから、うかがい知る事はできませんが、例えば、樺太沖で大韓航空機が旧ソ連の戦闘機に撃墜された際のパイロットの交信が非常に鮮明に録音され、何が起こっているかを瞬時に判断し、米国とその情報を共有していたというのは驚きです。公開されたのは通信傍受だけですが、それに加えてレーダーによる追跡も正確に行われていたようです。 日本の自衛隊は、旧ソ連軍のベレンコ中尉がミグ25に乗って北海道に飛来した一件以来、情報収集能力を大幅に向上させています。

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大規模な戦争の場合、情報戦は重要です。敵の通信を傍受し、敵の暗号を解読し、攻撃に備えたり、裏をかくことができれば圧倒的に有利になります。 第二次大戦では情報戦に勝利した方が勝っています。 でもそれは戦時下の話です。

情報収集能力が役に立つのは、実際に戦争を行っている最中、もしくは開戦が予想される段階です。平時に於いて、しかも戦争を放棄した我が国では、情報収集能力は宝の持ち腐れかもしれません。

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実際、核実験やミサイル発射が予め分かったからといって何の役に立つのか?

現に、どんなに偵察能力に優れていても、どんなに優秀なスパイ衛星を使っていても、北朝鮮がミサイルを発射して日本のEEZに着弾させたり、核実験をすることを止めることはできません。 拉致被害者を取り戻すこともできません。 全く無力です。

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日本の自衛隊のインテリジェンス能力は、米軍には重宝されるけれど、隣国の暴挙を止められないのです。

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それを考えていると、唐突ですが、映画「男はつらいよ」に出てくる、インテリ男と寅さんの喧嘩を思い出します。

インテリの方は何でも知っていますし、弁はたちます。口論で無学な寅さんを言い負かすことはできますが、腕力をふるう訳にはいきません。 結局寅さんを屈服させることはできないのです。寅さんは「てめぇ、さしずめインテリだな?」と言って、口論を拒絶してしまうのです。インテリのある種の弱さを揶揄するというのは、映画「男はつらいよ」シリーズのひとつの重要なテーマでした。

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日本は、北朝鮮を屈服させたり、北朝鮮に圧力を加え、影響力を及ぼそうなどと考えている訳ではありません。 ただ、拉致被害者を帰せ、そして日本にミサイルを飛ばしたり、核の恫喝をするのを止めろ・・と要求しているだけです。具体的には国連決議を順守しろと言っているだけです。 至極、正当な要求をしているだけです。

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しかし、話し合いと経済制裁などの非軍事的圧力だけでは、その正当な要求も無視されるだけです。 何かいい知恵はないものか?

そうです。外交の重要問題を解決するのは知識(インテリジェンス=intelligence)ではなく、知恵(インテレクチュアリティ=intellectuality)なのです。 

高価で奇妙な形をした飛行機よりも、一人の知恵のある政治家がいれば、多くの問題が前進し、解決するのですが、今の日本にはそれがいません。 ついでに言えば韓国にもいません。


【 マツダランプの謎 】 [雑学]

【 マツダランプの謎 】

中国に暮らした頃、電球の寿命が短いのに悩みました。取り替えたばかりなのにすぐ切れますし、ひどいのになると、最初から球が切れていました。誰も電球を信頼せず、なんと電器店やスーパーのレジには、購入する前に電球が灯るかどうかを試す台がありました。

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それに比べると日本の電球は優秀だなぁ・・なんて思いましたが、既に日本では蛍光灯が圧倒的で、白熱灯は減っていました。その蛍光灯も今はLEDに主役の座を譲りつつありますが・・・。

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電球の寿命を考えた場合、良品の寿命はt-分布曲線に沿った分布を示します。寿命を規定するのは、フィラメントに用いるタングステン線の径が一定で介在物が無いこと、フィラメントは正確な2重螺旋形状を呈すること、架台となるモリブデン線の径や接着が正確で、しっかり固定してあること、封入してあるアルゴンガスの気圧が正確で、不純物としての窒素や酸素の分圧が低いこと等、多岐にわたります。勿論、電球側の事情だけでなく、電力側も電圧と周波数が正確かつ一定であることが求められますし、頻繁にON/OFFをするかも重要な因子です。

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電球の品質を調査した「暮らしの手帖」がどこまで踏み込んだ商品試験をしたかを知りませんが、日本の電球の品質は戦前から優れていたそうです。 それはマツダランプのお陰です。 私の子供の頃、電球の底のスリガラスには「マツダ」とカタカナで書かれていました。

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その「マツダ」を見ていた私に、母が不思議な話をしてくれました。それは「ユダヤ禍の世界」という奇書の話です。 第二次世界大戦の前、日本がナチスドイツと友好な関係にあり、日独伊三国同盟を結ぼうかという時です。 どこの国にも政府の権力に阿ろう(おもねろう)とする学者がいるものです。それを後に吉田茂は「曲学阿世の徒」と呼びましたが、その曲学阿世の学者が、反ユダヤ主義についての本を著しました。

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この本はナチスの反ユダヤ主義に迎合するもので、日本の政府にとっても都合のいい主張でした。この本には、どの世界にもユダヤ人の陰謀が潜んでおり、密かにその国の経済を乗っ取ろう・・としていると書かれていたのです。

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その本の中で、一例としてマツダランプが取り上げられていました。

「これは、あたかも日本人の松田さんが経営する会社の製品のように見えるが、さにあらず。マツダはゾロアスター教の光の神であるMAZDA神に由来する。 そのメーカーの経営者はユダヤ人であり、外国資本の会社なのに、あたかも日本の会社を装って、日本の電球市場を牛耳っているのだ」 と書いてあったそうです。

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このユダヤ陰謀論には、びっくりです。大人になってから調べてみると、最初にマツダランプを始めた人がユダヤ人か否かは不明でしたが、これはGEブランドであり、日本では長らく東芝がそのライセンスを受け取って生産していたとのこと(他の企業がマツダランプの商標を用いたこともあるらしい)

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つまりGEのマツダブランドは、海外の企業も使えたのですが、高級・高品質な製品にのみ与えられ、品質は保証されていたそうです。 何のことはない、東芝の電球だったのですが、マツダブランドが日本のものではなく、「松田」と紛らわしいのは事実でした。やがて東芝は、Toshibaと筆記体でロゴを入れるようになりました。

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その後、広島の東洋工業がマツダに社名を変え、ローマ字表記をmazdaにした際、CMで「ゾロアスター教の光の神・・・」と説明しているのを聞いて、私は思わず苦笑いしました。

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それはともかく、電球は品質管理が難しく、ある意味でその国の工業技術の水準を評価するバロメーターになりえました。 その中で日本の電球は優秀でした。 米国でゴルフをして、ひどいスコアを出してしまうと、上司から米国製の100Wの電球をプレゼントされました。 そしてその時のスピーチは、

「米国の電球はよく切れる。 君も早く100を切るように・・ということで100Wの電球をあげよう」

私などは、「早く100を切るように・・・というのは体重のことですか?」とまぜっかえしてしまいそうですが。

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しかし、時代はソリッドステートです。ガラス管の電気部品(タマ)はいたるところで姿を消しつつあります。アンプに用いた真空管はトランジスターになり、TVブラウン管は液晶パネルになり、電灯もLEDライトになりつつあります。TVカメラの撮像管はCCDやイメージセンサーになりました。残っているのはコピー機の陰極管とスーパーカミオカンデぐらいです。メーカーもウシオ電機と浜松ホトニクスぐらいになりました。

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そう言えば電気工学科で、半導体でなく真空管を研究していた学生が、「僕はイシヤではなくタマヤになる」なんて言っていましたが、彼は今頃何をしているのでしょうか?

ひょっとして花火師になっているかも?なんて水銀灯の下で大輪の花火を見ながら考えます。 もっとも「た~まや~」なんて掛け声はありますが、玉屋そのものはとうに無くなったそうですが。 ちなみに打ち上げ花火の品質・性能においても、日本は随一だそうです。 こちらはユダヤ人関係なしで純粋な日本製です。

「橋の上、玉屋、玉屋の声ばかり、なぜに鍵屋と言わぬ情なし (錠無し)」


【 蚊を撲滅する その2 】 [俳句]

【 蚊を撲滅する その2 】

 

ミカンコミバエやウリミバエでは大成功した、不妊虫放飼作戦が、蚊の場合にうまくいかないのか?

以下のURLに分かりやすい解説が載っています。

http://wired.jp/2008/01/29/%e8%9a%8a%e3%82%92%e7%b5%b6%e6%bb%85%e3%81%95%e3%81%9b%e3%82%8b%e3%81%9f%e3%82%81%e3%81%ae%e3%80%8c%e9%81%ba%e4%bc%9d%e5%ad%90%e7%b5%84%e3%81%bf%e6%8f%9b%e3%81%88%e8%9a%8a%e3%80%8d/

実は、不妊虫放飼は、オスの個体そのものを不妊にする訳ではありません。

ハエやハチの場合は、オスの成体に、放射線を当てます。 コバルト60やセシウム137の放射線を当てると遺伝子が傷つき、その子供として生まれた個体は生殖可能になる前に、死んでしまうのです。 そうして1世代後に個体数を激減させるという恐ろしい技です。

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しかし、蚊でこの方法を用いると、放射線で被爆した個体が死んでしまうのだそうです。それでは意味がありません。とりあえず、メスと交尾してもらわなくてはならないからです。そこで、ミバエでは大成功したこの方法を蚊については諦めるしかないか・・と思った訳です。

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話は脱線しますが、福島第一原発の爆発事故では莫大な量のセシウム137が放出され、福島県内には立入制限区域が残っています。マスコミや原発反対派は、汚染地域は依然有害であり、環境も破壊された・・と主張します。しかし、生体にどれだけ有害な環境か?といえば、明確な証拠がありません。 それなら蚊の生息数を調べてみてはいかがでしょうか? 前述の通り、か弱いオスの蚊は、セシウムの放射線で容易に死にます。もし、福島県の蚊の数が少なくなっていれば、反対派の言うとおりでしょう。蚊の生息数に変化がなければ、反対派の主張は嘘っぱちかも知れません。放射線の恐怖を誇大に語るのは、第五福竜丸以来の日本のマスコミの伝統ですから。

でも・・、誰も福島県の浜通りの蚊の生息数を知らないかも知れない・・・。

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話を元に戻します。蚊には使えない不妊虫放飼ですが、放射線の代わりに薬品で処理する方法を思いついた人がいるそうです。

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その薬品で、遺伝子を傷つけた場合、生まれてくる子供は、抗生物質のサイトカインを摂取しなければ・・・まもなく死ぬ運命にあります。 天然の蚊が抗生物質を摂取することはありえませんから、こちらも生殖活動の前に死に絶えることになり、不妊虫放飼が成功します。

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これを全世界規模で行えば、天然痘と同じように、マラリアも撲滅できるかも知れません。 すでに、このプロジェクトのために、世界の低緯度地域に蚊の大量生産工場が建設される見通しで、中国にその1個目に工場ができるそうです。 そこで生産し放たれる蚊は、処理をしたオスの蚊ですから、直接、人を刺すことはありません。無害な蚊を放散することになります。

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このプロジェクトが成功すれば、温帯地域の蚊の対策にも適用して欲しいものです。

日本には犬のかかるフィラリアがありますが、これも蚊が媒介します。沖縄には人の罹るフィラリアもありますし、八丈小島にはマレー糸状虫の寄生虫病があります。

熱帯に話を戻せば、象皮病もありますし、大村教授の研究で有名になったオンコセルカもあります。蚊さえいなくなれば、実に多くの人が苦しみから解放されます。

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いや、蚊だけではありません。日本には咬まれると強烈に痒いヌカカやブユがいます。アフリカには恐ろしい眠り病を媒介するツェツェ蠅がいます。それらを不妊虫放飼の方法で撲滅できたら、どんなに素晴らしいことか・・。

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かつて北海道大学農学部の梅谷献二教授と、九州大学農学部の安富和男教授は、「毒虫の本」の中で、人に都合の悪い害虫を絶滅させるというのではなく、棲息空間を分離して相互に忌避することで、共存できないか?という提案をしています。でも、マラリア蚊やツェツェ蠅のような獰悪な種族と共存共栄は不可能でしょう。なにせ向こうが、人の生命を脅かしてくるのですから絶滅もやむをえないか・・と思います。

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ここで再び放しは脱線します。 うるさくて、不快で、嫌な昆虫である蚊を詠みこんだ俳句はたくさんありますが、一番有名なのは夏目漱石の

「叩かれて 昼の蚊を吐く 木魚かな」 でしょう。

時期的には漱石が鎌倉の円覚寺で座禅していた頃の句かと思います。彼の句は無論、川柳ではなく、正統の俳句ですが、どことなくおかしみというか滑稽さがあり、それが彼の俳句の真骨頂になっています。

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それにしても、座禅しながら、心と頭を空っぽにせず、俳句をひねっていたなんて、漱石先生ずるいぞなもし・・・となぜか松山弁で夢想したところで、私は警策にピシャリと叩かれました。 座禅しながら、ブログの原稿を考えていた私の方が、ずるかったようです。


【 蚊を撲滅する その1 】 [俳句]

【 蚊を撲滅する その1 】

 

もし、あなたが、アフリカの平均寿命を1歳のばそうとすれば、或いは死亡率を5%下げようとすれば、何に取り組むでしょうか?医薬品の提供でしょうか?病院の建設でしょうか?それとも公衆衛生の啓蒙普及活動の推進でしょうか?

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私なら、蚊の撲滅を目指します。現在、人間を最も殺している動物である蚊を退治するのです。これはご承知の通り、マラリア蚊のことです。日本では忘れられた存在であるマラリアこそが、アフリカでは最も恐るべき存在なのです。

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日本にも蚊が媒介する伝染病はあります。最近はあまり聞きませんがコガタアカイエカが媒介する日本脳炎は恐ろしい病気です。中国の南部では乙型脳炎としてまだ恐れられています。また日本でもたまにデング熱が発生すれば話題になりますし、南米でジカ熱が発生すればこれも話題になります。日本ではなじみがありませんが、将来、西ナイル熱が本格的に日本に上陸すればこれも大騒ぎになるでしょう。

でも、何と言っても恐ろしいのはマラリアです。

http://www.mensholos.com/feature/14931.html?utm_source=outbrain&utm_medium=cpc&utm_campaign=ob2016072703

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マラリアの撲滅には大金持ちのビル・ゲイツも関心を示し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団がお金を注ぎこんでいます。しかし、どことなく見当違いの攻め方です。途上国にマラリアの特効薬であるキニーネの提供などをしている模様ですが、マラリア対策は蚊の撲滅こそが鍵です。

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蚊の対策は2通りあります。

1. 蚊が人間の居住空間に入らないようにして、蚊にさされないようにする。

蚊帳を張ったり、蚊取り線香、蚊遣りを焚いて、蚊が人のいる空間に入らないようにするという方法です。家屋の窓や扉などの開口部にレーザー光線を仕掛けて、そこを通過する蚊を撃墜する方法については、このブログで以前に紹介しましたが、非常に有力な手段です。

レーザー光線の発射装置が150ドルほどするのが難点です。ビル・ゲイツにとっては何ら問題ない金額ですが・・・。

http://news.livedoor.com/article/detail/4603266/

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2. もうひとつは、蚊の絶対数を減らして、滅多に刺されない様にするというものです。

必要な場合、特定の地域では蚊の絶滅を視野に入れます。

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1の手段の方が穏便で、環境にも優しいようですが、限界があります。日本のように衛生環境の整った地域なら蚊を人間から隔離することも可能ですが、亜熱帯の地域、湿潤で水溜りの多い地域、家畜の多い地域、住居が粗末な地域などでは、限界がある事が分かります。せいぜい、乳幼児の寝床に蚊帳を張る・・ぐらいが現実的です。

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そうなると、やはり蚊の絶対数を減らすのが現実的です。実際、デング熱の問題が明らかになってから、シンガポールでは蚊の撲滅運動が盛んです。その方法とはボウフラが湧く水溜りをなくそうというもので、庭先などに水溜りを作ると罰金を科すという厳しいものです。シンガポールをファインカントリー(素晴らしい国/罰金の国)と呼ぶ人がいますが、全くその通りです。

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シンガポールに行かれた方はご存知でしょうが、この国は、1日に1回以上、スコールというか驟雨に見舞われます。犬の食器だろうが、空き缶だろうが、庭やベランダに放置すれば、それがそのまま水溜りとなりボウフラの発生源となるので、住民は大変です。そしてシンガポール政府がどんなに頑張っても、マレーシアのジョホールバルの方から蚊がやってきます。かつて山下奉文の軍隊がやってきたように。

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なかなか、これという方法はないのですが、そこで人々は、過去に害虫退治に成功した画期的な方法を思い出します。これは、大量のオスの成体の遺伝子に手を加え、将来、子孫が生まれないようにするというものです。

不妊虫放飼(SIT)と呼ばれるこの方法は、羽を持つ昆虫の撲滅には非常に有効です。

過去に日本では南西諸島や沖縄のミカンコミバエやウリミバエの絶滅や劇的な個体数の削減に成功しています。

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蚊でもこの方法が使えないのか?と誰もが思った訳ですが、そう簡単ではないようです。それは一体なぜか?

 

詳しくは次号で紹介いたします。


【 重力場とデンドライト(柱状晶) 】 [鉄鋼]

【 重力場とデンドライト(柱状晶) 】

 

昔、雑誌「鉄と鋼」で見た不思議な写真を覚えています。

金属結晶の写真ですが、一方向凝固の過程で、定期的に明瞭なデンドライト(柱状晶)が現れ、その後にデンドライトが消滅して、等軸晶(equiaxial crystal)の領域が現れ、さらに再びデンドライトが現れる写真です。これは飛行機の急降下で短時間の微小重力状態をくりかえし発生させ、その間に一方向凝固を行う実験の結果です。

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重力が存在する環境下ではデンドライトが成長し、重力が存在しないか微小であればデンドライトにはならない・・という証拠写真でした。(残念ながら引用元の文献を失念しました)

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確実なのは、デンドライトの成長には液相側に流動の存在が必要ということです。

一般的には、温度差+濃度差 → 密度差・比重差 → (重力下での)対流の存在と考えれば分かりやすく、重力場の存在はデンドライト成長の必要条件と考えられたのです。例えば以下の報告があります。

http://www.jasma.info/wp-content/uploads/past/assets/images/jornal/19-2/2002_p125.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1955/76/8/76_8_1211/_pdf

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1980年代、私は鋼の凝固においてデンドライト凝固がカタストロフィックに終了し、等軸晶凝固に切り替わる引き金となる条件は何か?を考えていました。いろいろな説がありましたが、はっきりしません。上司・先輩のアドバイスでは液相側で流動が無くなることが引き金だろう・・とのことでした。

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重力は常に一定ですから、流動を妨げる抵抗の存在が重要であると思われました。凝固が進むと液体の流路が狭くなり、流動抵抗が増し、流動限界固相率に達するとデンドライト成長は止まりますが、その流動限界固相率をDarcy流れの理論に基づいて、北海道大学の高橋教授などが計算されました。

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しかし、私は重力とデンドライト成長の関係について、いまひとつ理解できなかったのです。その疑問は今も続いています。疑問点は多くありますが、

1.液相側の局所的な濃度差や温度差は、それほど大きいとは思えません。はたして強い熱対流を起こす理由となりうるのか?仮に熱対流があったとしても、マクロ的な溶鋼流動に比べて相対的に小さく無視しうるのではないか?

2.重力場は、方向が一定で下向き(当たり前ですが)。一方、凝固は三次元的で、各方向にデンドライトは成長する。垂直方向の成長と水平方向の成長に差が見られないのはなぜか?

3.熱対流がなくても他の対流が存在する。重力場がなければ熱対流はないが、他の対流、例えばマランゴニ対流の影響を考慮すべきではないか?

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特に3は重要なポイントで、微小重力下でもデンドライトはできるのではないか?というのが私の考えですが、それについて専門家から解答やアドバイスをいただくことはできませんでした。当時、私は製鉄所を離れて海外事務所に異動になったからです。

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ご専門でない方に申し上げます。マランゴニ対流とは重力の代わりに表面張力が原因となって起こる対流のことです。目に見える例としては、ワイングラスの内側でワインの雫がなかなか液面に降りてこない現象があります。「エンゼルの涙」とか言うそうですが、私は文学的な表現が苦手です。

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無重力下または微小重力下ではマランゴニ対流が顕在化して、通常とは異なる形態のデンドライトができるはずではないか?それなのに等軸晶になるのはなぜか?

どうも飛行機や竪坑を用いた短時間の微小重力実験ではそこのところが分かりません。 誰か本格的な実験をしてくれないかな?と考えていましたが、ちゃんといました。

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デンドライト成長とマランゴニ対流の関係を研究した例として、阪大の岡野氏の研究などがあります(残念ながら鉄鋼ではありませんが)。

http://www.jasma.info/wp/wp-content/uploads/2013/02/2013_p002.pdf

そして宇宙ステーションでは大西宇宙飛行士が本格的にマランゴニ対流の実験を行う予定です。

http://www.nikkan.co.jp/articles/view/00397830

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実は宇宙ステーションの運営を考えた場合、難しいのは、研究のマネジメントです。もっと言えばコストに見合うような研究テーマを継続的に確保できるか?です。 無重力に近い微小重力、非常に気圧が低い高真空、宇宙空間の厳しい放射線環境、それらを有効活用し、宇宙空間でなければできない実験テーマはそれほど多くありません。一方、宇宙飛行士を一定期間、宇宙ステーションに滞在させて、実験を行うためにかかる費用は莫大です。本当に行う価値のある研究・実験テーマを掻き集めて計画を立てないと、せっかくの日本の実験棟「きぼう」も遊んでしまいます。 正直に言って、これまでの日本の研究テーマの中には、どうでもいい研究が多く含まれていました。

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魚のコイは宇宙酔いをするか?なんてテーマは、人間が宇宙酔いをするか否かを確認するための基礎実験だったそうですが、既に人間の宇宙飛行士が長期間宇宙に滞在しているというのに、今更コイで何を確認するのでしょうか? 無重力下でクモはどのように巣を張るのか?なんてテーマも・・・どうでもいい事に思われてなりません。

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研究テーマを提案した学者達は真剣だったのでしょうが、実験を請け負わされる宇宙飛行士達はどう思っていたのか・・・。多分ばかばかしいと思いながら実験したのではないでしょうか?

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金属関係の研究も多く実施されています。特に、比重差が大きく、重量のある地上では決して均一に混じらない2種類の金属を混ぜて、新しい物質を作り出す研究が宇宙実験で進歩しました。 しかし、凝固現象の本質の追及という点ではデンドライトの研究の方が面白そうです。

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繰り返しになりますが、金属凝固にマランゴニ対流の影響が現れるか否か、これは興味深い問題です。そして私が長い間、解を求めて得られなかった問題です。今回、大西宇宙飛行士の実験によって、それが明らかになるのだとしたら、実に楽しみで、ワクワクします。 

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問題は、その答えが出る時、私がまだ現役の鉄鋼技術者でいるかですが・・・。


【 捜狐者とジャーナリスト 】 [雑学]

【 捜狐者とジャーナリスト 】

 

唐突ですが、NHKの朝ドラの「とと姉ちゃん」に雑誌「暮らしの手帖」が正義のジャーナリズムとして登場しています(ドラマの中では「あなたの暮らし」になっていますが)。

この雑誌は、不良品を消費者に売りつける悪徳商法を厳しく断罪する正義のマスコミなのですが・・・、私の母は、生前、この雑誌が嫌いでした。

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嫌いである理由は様々ですが・・・、例えば以下の項目です。

1.家事や裁縫などの主婦の仕事を合理的にする・・と言えば聞こえはいいが、いかに手抜きし簡略化できるかに主眼点を置いた提案が、正統派の家政学を信奉する母には抵抗がありました。

2.商品テストについては、母の意見は以下の通りでした。

(1) 外国製品はよくて国産品はダメ・・というゆがんだ舶来品信仰が、卑屈で一方的で嫌い。 外国製品との比較で、常に国産品が劣る・・というステレオタイプの思考は昭和30年代まで、確かにあったのですが、今思えば噴飯物です。

(2) 商品の品質や性能は価格とのバランスで決まるのに、安かろう悪かろう・・という製品は不可という思想が露骨で、安物しか買えない貧乏人を眼中に置いていない。

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3.そして母が嫌悪した最大の点は、良い部分を褒めるのではなく、欠点やアラ探しばかりを行い、悪い点をあげつらうという姿勢です。社会悪を追究し、それを暴きだすことをマスコミの使命と考える人もいますが、それは人格としてみた場合、しばしば卑しさにも通じる行動です。

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母とは別の人生を歩んでいる私にも別の意見があります。私自身は1グラムの鋼片も自分の手では作り出していませんが、私は長い間製造業に身を置いてきました。だから「ものづくり」がいかに大変で奥が深いかを実感してきました。そしてメーカーに勤務する多くの人は善良で勤勉です。

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だから、実際に品物を作った経験が無く、ペンより重たい物を持った事の無い人から、メーカー苦心の作品を貶されるのは、物づくり側の人間としては愉快ではありません。公平で厳格な試験を行ったうえでの評価と言い、実際に使用する主婦が使った結果だ・・とはいうものの、TVに映る出版社での試験は、大学での実験などに比べると幼稚で厳密性を欠きます。その試験結果で断罪されるのなら、反論もしたくなるだろうと思います。

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そして私が考えるのは、ジャーナリズムを標榜する人達の、あまりの無知というか勉強不足、そしてひとりよがりです。例えば、アイロンの実験です。

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アイロンの持ち手が高温になって、プラスチックが変質するというのは、重大な品質欠陥ですが、まともなレポートなら、そのプラスチックの材質は何で、その軟化点温度や融点は何度か、そしてアイロンの温度は何度なのかを確認して報告します。その上で、対策としてプラスチックの材質を変更すべきなのか、温度が上がらないようにすべきなのか、後者なら断熱材を入れるべきか、ニクロム線にサーモスタットを入れるべきなのか・・を提言しなければレポートとは言えません。単に、プラスチックが熱で変質した。危険で怪しからん・・と言うのでは、ただの誹謗と紙一重です。

・・・・・・ 

マスコミやジャーナリストがいかに無知で不勉強かを示すエピソードはたくさんありますが、ここでは省略します。しかし、例えば家庭電化製品の評価試験をするなら、それなりの電気工学の知識を持った人が当たるべきです。それが、「あなたの暮らし」にはありません。 ドラマには登場しませんが、昭和30年代、初期の電気洗濯機ではアースが不完全なために感電死する事故が多発しました。しかし、その問題に対して電気工学に暗い「あなたの暮らし」もとい「暮らしの手帖」は、全く無力でした。

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アイロンに限らず製造業全般を監視するのがマスコミの役目だそうですが・・・、例えば、製鉄所では絶えず公害監視の目が光っています。環境を汚染したり近隣に迷惑をかけることは、最大のタブーとされています。しかし、監視している人達の大気汚染についての意識はかなり素朴です。 「地域の人、そしてマスコミは、黒い煙には大騒ぎして怒るけれど、白い煙は問題視しない。実際には煙の色より含まれている物質の方が問題なのに・・」と、担当者が苦笑いしたのを覚えています。

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話は変わりますが、公平性を担保するために、マスコミの一方的な指摘・非難に対しては、一定の反駁の権利を認めるべきだ・・という発想が昔からあり、「アクセス権」と呼ばれています。しかし、それが認められることは非常に稀です。これは新聞社や出版社だけでなくTV局でもそうです。

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かつてNHKが、トルコ政府とクルド人勢力の衝突を報道した際、それがクルド人側からの取材だけに基づいた内容だったので、当然これに反発した駐日トルコ大使館は反論し、その内容を報道せよと要求しましたが、NHKはトルコ大使館から反論があったことさえ黙殺しました。 NHKでそうなら、ましてや民間の一出版社が公平性を担保するために相応の努力をしているとは思えません。

・・・・・・

TVドラマの中で悪役となるアカバネ電器は姑息かつ卑劣な手段を使って「あなたの暮らし」に圧力をかけますが、私が古田新太なら、そうはしません。正々堂々とアクセス権を求め、アカバネ電器側の主張も掲載するよう求めます。無論、実験に不備があるならその点を指摘し、試験結果の信ぴょう性に疑義があるなら、その点を指摘し、さらに同社が取り組もうとしている改善対策を紹介させろ・・と主張します。もしスカートを身につけた独善的な編集長がそれを断れば、法的手段に訴えます。

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その手続きをする過程では「あなたの暮らし」とアカバネ電器のどちらに非があるかは確定しません。 そして、問題はマスコミ対メーカーではなく司法の場(つまり弁護士)に移ります。実は米国では早くからそうでした。

・・・・・・

1960年代、米国で商品の安全性に早くから着目し、メーカーを糾弾したのはラルフ・ネーダーという弁護士でした。 彼は、ある女性が運転する乗用車が事故で横転した際、助手席の夫が鋭利なダッシュボードの角にぶつかって死亡した事件を扱い、本来死亡事故には至らないような事故で、同乗者が死亡したのは、安全設計に不備があったからだとして、フォード社を相手取って訴訟して勝ち、莫大な賠償金を得ました。

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今になって思えば、シートベルトさえしていれば防げた怪我ですし、自動車の横転というのは、かなり大きな事故なので、裁判の結果には疑問符が付きます。(誰も信用しませんが、オヒョウの専門は安全工学なのです)。それはともかく、彼の活躍は、万事訴訟社会である現代の米国の風潮の先駆けにもなりました。

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お金のためとはいうものの、ラルフ・ネーダーの活動は、「あなたの暮らし」と似ており、その内容をかなり先鋭化させたものです。米国ではマスコミよりも弁護士の声の方がしばしば大きいのです。

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話を日本に戻します。公平性を欠いた独善的な報道を行い、時には脅迫まがいの行為を行うブラックジャーナリズムを、かつて日本では捜狐と呼んでいました。 いや、マスコミ自体が賎業とされた時代、ジャーナリストを貶す言葉として、彼らは捜狐者と呼ばれました。身なりは紳士だけど行いはヤクザだということで、羽織ゴロという言い方もあります(羽織を着たゴロツキという意味です)。 ちょうど夏目漱石が大学の教官を辞めて朝日新聞に入ろうか迷った頃です。マスコミは賎業だったのです。

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ひたすら、他社の製品の非をあげつらい、それで糊口を潤す行為をジャーナリズムとするならば、それは捜狐と呼ぶべきです。 そう考えたところで中国語には立派に「捜狐」という言葉が残っていることに気付きました。 やはり中国でも、ジャーナリズムは潜んでいるキツネをあぶり出す行為に例えられるのだな・・と思います。

・・・・・・

そして中国のインターネットのニュースサイトに「捜狐」というサイトがあるのに気付きました。これは環球時報などと異なり、民間の組織で、政府批判も行うなど、かなり言いたい事を言うサイトのようです。(勿論政府の検閲はあるでしょうが)。

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あれぇ?中国では「捜狐」という言葉にネガティブなニュアンスは無いみたいです。

そして北京の「捜狐」の報道内容はかなり中立的で、政府の意向に沿って愛国心や反日思想をあおるような報道はありません。 中国の捜狐者はかなり上等です。

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彼らが、中国製の家電製品の商品試験を行えば、中国の消費者は救われるはずです。中国版「あなたの暮らし」が発行されることを期待します。

 

そうなると・・日本製家電の優位性はますます低下しますが。


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