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【 身体髪膚これを父母に受く あえて毀傷せざるは孝の始めなり 】 [雑学]

 【 身体髪膚これを父母に受く あえて毀傷せざるは孝の始めなり 】

 

ご存知の方も多いでしょうが、これは孝経に登場する親孝行についての説明です。孔子の考えは、「自分の体は髪の毛、皮膚に至るまで親からもらったものだから、これを大切にするのは親孝行のイロハのイである。傷つけるようなことがあっては申し訳なく、親不孝な事である」という訳で、身体を大切にすることは、儒教の教えの根幹ともなっています。

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私は、子供の頃、膝を擦りむいて母に赤チンを塗って貰った時に、この言葉を教わりました。こちらは怪我をして痛い思いをしているのだから、少しは慰めてもらえるだろうと期待したのですが、そうではなく逆にたしなめられたというか、叱られた訳です。以来、自分の身体をなるべく傷つけないようにと私は心がけています。

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世の中にはいろいろな思想があり、それらにはそれぞれ異論反論もある訳ですが、自分の身体を傷つけず、大切にしろというのは、全く反論の余地が無い自明の理です。

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工場の安全教育では、他人を傷つけてはならないと指導する一方で、自分自身も怪我しないことを重要な目標にしています。 私は一度、この孝経にある「あえて毀傷せざるは孝の始めなり」を、現場の安全指導に用いたことがありますが、文章が難しかったためか、評判はさっぱりでした。

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そういう訳で、親孝行を奨める儒教文化の国では、体を傷つけることはもってのほかなのですが、現実にはそうでもありません。 韓国の若い女性の間では、美容整形が市民権を得ています。 全ての女性が美容整形するかは別にして、整形手術することは、自分をより美しくする積極的な行為として好意的に理解されているのだそうです。

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親からもらった顔を捨てて、わざわざ体にメスを入れるなんて、親不孝じゃないのかい? と言いたくもなるのですが、顔を美しくすることに精神面・物理面でメリットがあるのも事実ですし、どちらを取るか・・・・、難しいところです。 美容整形の手術もお化粧の延長上だと考えれば、否定もできなくなります。

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ところで、病気にならないように、怪我しないように、注意せよ・・というのは当然ですが、この戒めの文章には、それ以上に、自傷行為を禁じる意味があるように思えてなりません。

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では大昔の中国で、自らの体を傷つけることを戒めた理由は何でしょうか?現代の美容整形に対応する何かが・・・古代にあったのではないか?と妄想をたくましくします。私は、古代中国の蛮族(今風に言えば少数民族)に刺青の習慣があったのではないか?と思います。 中国の博物館には、刺青をした古代人の絵がありますが、漢民族のそれには無いように思います(私が知る限りなので、正確かは不明ですが・・・)。 

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文明人である漢民族は刺青をしない、野蛮な少数民族は刺青をする、という前提で、

「諸君、文明人たるもの、自ら体を傷つけてはいけない。それは第一の親不孝である」と孔子は言いたかったのでしょう。

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儒教精神がバックボーンとなっている韓国で、美容整形をしようとする女性にその説明をしたら、どんな顔をするでしょうか?

日本では長い間、刺青とはアウトローがするものでした(アイヌの人などを除き)。刺青をよしとしなかった背景には、「身体髪膚・・・」の戒めがあったのだと思います。

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それが今、tattooをするのが流行になりつつあります。実際に肌を傷つけるのをためらう人は、シールを使ったフェイクのtattooをするそうですが。

これは、儒教の戒めがなく、肌が白くて絵が映える西洋人のtattoo文化を受け入れたものかも知れませんが、どうも私にはしっくりしません。

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温泉などの公衆浴場では、刺青をした者の入浴を禁じる規則を設けている施設がありますが、その結果tattooをした外国人がお風呂に入れなくなり、外国人差別だと問題になっているのだそうです。

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私などは、外国人だって刺青をするのは、やはり堅気じゃないように思います(マオリ族などを除けば)。 刺青をした人は、自分の判断でしたのだから、その結果受ける不利益や差別も、自己責任として、温泉に入るのを我慢してもらうべきではないか・・と思います。

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実際、刺青をすることで肉体的な不利益も被ります。 医師以外の人が不衛生な環境下で施術すれば、感染症になります。 また都市伝説かも知れませんが、刺青をした部位は皮膚呼吸が妨げられるため、広範囲に及ぶ火傷を負った場合など、皮膚呼吸で酸素を得られなくなり、病状に悪影響を及ぼすとのことです。

そして何といっても、刺青の最大の問題は、後で消しにくいことです。若気の至りで体を傷つけ、後で後悔しても遅いのです。刺青をして後悔した人は多くいるはずで、それらの人は自分の体験談を、若い人に多いに伝えるべきです。その際に、「身体髪膚・・」の戒めを使うのもいいかも知れません。

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まあ、よその方の刺青をとやかく言う必要はありません。 私自身はなるべく身体を傷つけないように努めてきました。

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しかし、そうもいかないこともあり、身体を毀傷することがあります。今回、私は大腿部付け根にある良性の脂肪腫(普通に言えば、コブ)を摘除する手術を受けました。 いわゆる外科的侵襲で、体にメスを入れた訳ですから、これは立派な親不孝です。 しかし手術を受けなければ、健康上不都合なことになるかも知れず、さらに親不孝となる訳です。 やれやれ困ったな・・ということで、皮膚の下の脂肪の塊を病院で剔抉して貰ったのです。

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手術中は、くだらない事ばかり考えます。

「うーむ。これで私も立派な“瘤取り爺さん”になってしまったな。でも“小太り”ではなく、“大太り”だから“大太り爺さん”と呼ばれるかも」

切り取られた脂肪腫の塊を見ながら、

「ブログの紹介欄に書いた通り、私はやっぱり“脂肪の塊”なのかなぁ・・・、さて、今晩は暇になるし、モーパッサンでも読もうかな」

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局部麻酔の手術の場合、患者はいろいろな事を考えるそうですが、私の場合はロクな事を考えませんでした。 やはり私は親不孝者です。


【 エリナー・リグビー 】 [イギリス]

【 エリナー・リグビー 】

 

一昨日、英国通過のポンドが大きく下落しました。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJV6GU6VDKHV01

背景には、EU離脱の交渉を始めた英国経済への不安があるようです。

EU離脱の交渉にあたる、哀愁の漂うメイ首相の表情がTVニュースで流れました。

なんとも難しい交渉です。まだEU離脱を決めていない段階なら、彼女にもカードはあり、交渉の余地はあるのですが、既に脱退を決めた上で、英国にとって少しでも有利な条件で脱退しよう・・というのは困難な交渉です。

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同盟を脱退する手続きについて、私に名案がある訳でもありませんが、最も愚かなのは、国際連盟を脱退した時の松岡洋右のやり方です。面子にこだわったのはいいとして、周囲を全て敵にしてしまい、日本としては何も得るものがなく、孤立を深めるだけ・・の結果になりました。そして仲間から飛び出して孤立した後に擦り寄ってくるのは、いつもチンピラです。国際連盟の代わりに日本が付き合ったのは、ナチスドイツとファシスト党のイタリアでした。

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英国のEU離脱はそれとは違いますが、前述の通り、離脱が決まった後の交渉は難しく、気の滅入る作業でしょう。ちょうど離婚を決めた後に子供の親権を争うようなものでしょう(私に経験はないけれど)。

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英国には苦い記憶があります。1992年のポンド危機です。EUERMからの離脱を強いられたこの経済危機では、一瞬の間に英国の富は10億ドル以上も失われ、ヘッジファンドを肥やす結果となりました。今回も下手をすれば、英国のポンドは売り浴びせられる可能性があります。

そしてEU離脱でぐずぐずしていれば、EU残留派の多いスコットランドが今度は英国からの独立を画策するかも知れません。 内憂外患の中の孤独な彼女です。

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苦悩に満ちた彼女の顔を見ていて、ふとビートルズの「エリナー・リグビー」が聞こえた気がしました。勿論空耳ですが。

日本ではあまり流行りませんでしたが、これはビートルズの代表的なヒット曲のひとつです。 孤独な高齢女性のみじめな姿を、写実的に表現する曲ですが、ポール・マッカートニーが、このおばあさんを、あざ笑い冷やかしているのか、それとも同情しているのか、ともに悲しんでいるのか、それが分かりません。だから、日本では人気が出なかったのかな?

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歌詞のあらましを書きますと、

ほら、あの孤独な女性 エリナー・リグビーを見てみろよ! 教会の結婚式で米粒を拾っているぜ。あの孤独な老人達に居どころはあるのかな?

マッケンジー神父はお説教の原稿を書いているぞ。どうせ、誰も聞きやしないのにね。

あれあれ、靴下の穴を自分で繕っているぜ。

エリナー・リグビーが死んでも、誰も葬儀には来なかった。教会の墓地に葬られ、泥だらけのマッケンジー神父がくたびれて、帰っていくぞ。

あの孤独な人達はどこへ向かうのかな?彼女らに居どころなんてあるのかな?

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ちなみに、エリナー・リグビーは結婚式のライスシャワーの米粒を拾っている訳ですが、スズメじゃあるまいし、地べたに落ちたお米を拾うとは思えず、撒かずに残ったお米を貰っているのだと、私は思います。

私の記憶なので、一部不正確かも知れませんが、考えてみればひどい歌詞です。日本で流行るはずがありません。

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ビートルズには孤独を歌う曲が幾つかありますが、老人の孤独をみじめに扱った曲は多分これだけです。では私がなぜTVニュースを見ていて、この曲をイメージしたか?

この曲のイメージがメイ首相に重なる訳ではありません。老大国英国がこれから味わう孤独感がエリナー・リグビーに重なるのです。

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そもそも、私がエリナー・リグビーでひっかかるのは名前の発音です。Eleanorと言えば、私の感覚では発音はエレノアです。 エレノアで有名なのはエレノア・ルーズベルト。 あのフランクリン・ルーズベルトの奥さんで、単なる大統領夫人の枠を超えて活躍した人です。 大学を経営したあたりは日本の鳩山薫子さんあたりと似ていますが、もっと女丈夫でした。(彼女の問題点は日本に対して非友好的だったこと)。

だからエレノアと聞くと、孤独でみじめなお婆さんをイメージすることはできないのです。

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メイ首相の前の女性首相と言えば、あの鉄の女ことマーガレット・サッチャーです。サッチャー首相は、英国病を打破して経済を成長軌道に乗せ、北海油田で富とエネルギーを手にし、フォークランド戦争に勝利して、英国を復活させました。サッチャーと比べると、いかにもメイ首相は損な役回りです。

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おばあさんにせよ、老大国にせよ、いずれ孤独感を味わうのは仕方のないことです。人は皆さん、いつか孤独感にさいなまれます。 その孤独感を鋭く表現したのは、倉田百三の「出家とその弟子」ではないでしょうか? この作品には多くの逸話というか、allegoryが登場しますが、その中に、弟子の唯円が親鸞に寂しさを訴える場面があります。

唯円が「寂しい」と訴えると、師匠の親鸞はそれを理解した上で、「お前の寂しさは、対象によって癒される寂しさだ。 私の寂しさはもう何者でも癒されない寂しさだ。人間の運命としてのさびしさだ」と語ります。

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これを少年時代に読んだ時、私は、大人になっていくということは“他者によって癒されない絶対的な寂しさ”を味わい理解していく過程なのだな・・と勝手に解釈しました。

癒されない寂しさを、何とか乗り越えたいと思ったのは、詩人の若山牧水です。彼は「幾山川 越えさり行かば寂しさの 果てなむ国ぞ今日も旅ゆく」と詠んでいます。

でも、牧水も知っていたはずです。 他者に癒されない絶対的な寂しさは、どこに行っても決して癒されないことを。

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そして彼だけでなく、多くの人が、解消する手段が無いことを知りながら、この運命としての寂しさを抱きしめているのです。 多分、メイ首相も、そして多くの英国民も。


【 メキシコと自動車産業 】 [アメリカ]

【 メキシコと自動車産業 】

 

トランプ次期大統領がツィッターで、「トヨタ自動車がメキシコに工場を作るなど怪しからん」と吼えたのに対して、豊田社長は「メキシコに工場を作る計画に変更はない。一方で米国にも今後5年間で100億ドルの投資を行う」と答えています。

http://jp.reuters.com/article/idJP2017011001000844

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常識的なまともな回答ですが、まてよ・・と言いたくなります。そもそも、何で米国に怪しからんと叱られなければならないのか? 日本の会社がどの国に工場を建てようが、その会社の勝手ではないか? 米国政府にとやかく言われる必要はありません。

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「どうせメキシコで作って米国で売るのだろう?」と言われても、NAFTAが現実にあるのだから、その域内のどこで売ろうがトヨタの勝手です。NAFTA(北米自由貿易協定)は米国も合意して締結された協定であり、現に存在する以上、利用しない手はありません。同じ自動車なら製造コストの安いメキシコで作るのは当然ですし、敢えて製造コストの高い米国で作るとなると、トヨタの株主から見れば背任行為となります。

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一方、トヨタは「米国でも企業市民(奇妙な言葉です)として、納税義務を果たし、地域に貢献し、雇用を維持していく」と言いますが、こちらはちょっと歯切れが悪いところがあります。

豊田章男社長が胸を張る「米国で1兆円以上の投資額・・」というのはそのまま雇用の創出に繋がるとは言えません。米国トヨタの本社機能をテキサスに集めることに要する費用もありますし、IT関連の子会社の設立もそれほど雇用創出に寄与するとは思えません。

ケンタッキーなどの既存の工場にも投資しますが、それにはロボット化などの投資も含まれ、雇用の拡大という点ではむしろ逆かも知れません。

テキサスへの本社移転だって今のカリフォルニア州トーランスにある本社の従業員にとっては雇用の危機となるものです。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3990

「米国での雇用を守る」と正面から言えないので、金額を言ってごまかしている・・・というところでしょう。

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そもそもトヨタには、言葉は悪いのですが、前科があります。その昔、愛知県に閉じこもっていた大企業トヨタが北米の生産拠点として最初に築いたのが、カリフォルニア州のNUMMIです。これはGMとの合弁でピックアップトラックカローラを作っていましたが、GMが手を引いて、トヨタ単独になったあと、トヨタはこれを閉鎖してしまいました。

若き日の豊田章男氏が幹部として勤務したのもNUMMIで、思い入れのあるはずのその工場を彼は閉鎖し、従業員は解雇されました。今、NUMMIはどうなっているかと言えば、電気自動車メーカーのテスラが買い取り、その生産ラインを活用しています。少し皮肉です。 だからトヨタは米国の雇用を最優先にするとは言えないのですが、まだましです。

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一方、GMやフォードは、トランプ氏の要請に屈する形で、米国内に生産ラインを作ることになりました。メキシコへの莫大な投資、地元へのコミットメントはどうするのでしょうか? トランプ氏のツィッターに、大企業が振り回されるのを見て、首を傾げたくなりますが、トランプ氏が優勢で企業側が劣勢のようです。ではなぜそうなるかと言えば、トランプ氏が本音で喋るのに対し、企業側が本音を言えないからです。

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その本音とは労働組合UAWの存在です。 米国は資本主義の王道を行く国ですが、一方で強力な労働組合を持つ国です。 全米自動車労組(UAW)もその一つですし、全米鉄鋼組合(USW)もその一つです。

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1980年代以降、五大湖沿岸の重厚長大産業が不振となり、「錆びついた地域」になった理由は、いろいろありますが、一つは強力な労組が支配する地域だったことです。

いち早くデトロイトを抜け出して、労組の無い会社「サターン」を実験的に経営したGMは一定の成果を挙げました。 遅れてきた日系の自動車各社は敢えて労組の強いミシガン州を避けて工場を建設しました。

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自動車各社は、単純に賃金が安いだけでメキシコを選んだのではなく、労組の影響をなるべく排除したかったのです。しかし、正直にそのことを言えません。なぜなら相手がトランプ氏だからです。

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トランプ氏が選挙に勝利した理由の一つは、プアーホワイトと呼ばれる、労働者階級の白人を味方につけたことです。 それまでは民主党支持者だった彼らを取り込んだのです。 本当はトランプこそ大金持ちの共和党員ですから労働者や組合から嫌われても仕方ないのですが、逆に民主党のヒラリークリントンの方が、お金持ちで高学歴で頭のいい鼻持ちならない女性というイメージを持たれて、支持者を失いました。

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GMもフォードも労働者を味方につけたトランプ氏相手に、組合の影響を除くためにメキシコに逃げた・・とは言えないのでしょう。

しかし、エルモシージョやアグアスカリエンテスにできつつある自動車産業の一大生産拠点を今更、放棄することはできません。 裾野が極めて広い、自動車産業では、組立メーカーの下に、部品メーカー、下請け、孫請、素材メーカーといった多種多様な企業が集まります。 既にメキシコには幾つもそれらの工場群が進出しており、更に発展中です。日系、米国系を問わず、この大きな流れを変えることはできません。 いかにトランプ氏といえども無理でしょう。

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この問題の対応を誤ると、日米の自動車産業だけでなく、日米墨の経済が落ち込む可能性があります。 TPPどころかNAFTAも崩壊してしまいます。それだけは避ける必要があります。

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せっかく出来上がった自動車の組立工場も部品工場も空き家になり、メキシコ人の失業者が街に溢れるようになれば・・・最悪です。麻薬がはびこり、それがやがて米国に流れ込み、米国はしっぺ返しを食らうことになります。

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では米国企業に逃げられたメキシコはどうするか? それに代わるテナントを探すしかありません。 実は労働組合に手を焼いている自動車会社が他にもあります。韓国ヒュンダイ(現代自動車)。韓国の労働組合もまた強力で、しばしば獅子身中の虫となって、企業経営を圧迫します。

現代自動車の場合、組合の賃上げ要求は激しく、今や若いブルーカラーの年間賃金は日本円で軽く1000万円を超えます。他産業や他の企業との格差も大きくなり、韓国国内で問題となっていますし、高過ぎる製造コストは、海外市場で現代自動車の競争力を大きくそぐ形となっています。

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組合の影響の及ばない土地に新しく工場を作って自動車を生産したい・・という思いはデトロイトの米系自動車会社以上かも知れません。 現代自動車はメキシコの工場を居抜きで買って、生産するかも。 でもそれとてトランプ次期大統領に一喝されたらどうなるか、分かりませんが・・・。


【 人望論 】 [雑学]

【 人望論 】

昭和の論客の一人だった山本七平の本が書店にあり、題名を見れば「人望の研究」とあります。面白そうなので買って読んでみたら、なるほど・・というか、今も昔も変わらぬ問題について解説してあります。彼は、日本社会特有の、曰く言い難いファジイな現象や特性を抉り出すことに優れていました。 彼を有名にした「日本人とユダヤ人」では、ユダヤ人との比較論で、日本人と日本社会の特性を鋭く描いています。

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凡百の日本人論は、西欧と比べて、だから日本はだめなのだ・・と貶すか、逆に日本はこんなに素晴らしいのだ・・と持ち上げるかのどちらかで、冷静に客観的に眺める評論は少ないように思われます。しかし彼の意見は常に客観的で、着眼点も独特です。「空気の研究」では、戦艦大和を無謀な特攻に行かせたのは、「空気」だ・・という、面白い解釈をしています。

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彼が今回研究した「人望」という概念も、曖昧模糊として、よく分からない存在ですが、実は日本の社会で重要な意味を持つ存在だ・・という彼の指摘には納得させられます。

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出世競争に参加する人も参加しない人も、集団の中で暮らす限り、人望の有無は重要です。 人物を評価する場合、客観的な試験で点数を付け、人に序列を付けるのはせいぜい20代の半ばまでです。 それ以降の評価は、もっと曖昧なもので決まります。 そこで決定的な意味を持つのは人望の有無です。山本七平も書いていますが、人望の有無はしばしばマイナス評価の際に議論され、「彼には人望が無いからな」の一言は、その人の全人格と能力を否定し、将来を閉ざす事になります。

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では日本社会では人望のある人が上に行き、リーダーとなるのか?と言えばそうでもありません。 逆に人望のある人が上に行けば、その組織は成功するのか?と言えば、これもそうとは限りません。 具体例を挙げれば枚挙に暇がありませんが、人望があるリーダーの元で成功した・・という例は、むしろ少数派かも知れません。豊臣秀吉などは文句なく人望があって成功もした例ですが、西郷隆盛などは人望がありましたが、挫折しました。

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以上は日本の場合ですが、外国でも人望の有無はリーダーを選ぶ際に最も重要なポイントとなります。 そしてリーダーは人望を失った瞬間に、その地位を追われます。

端的な例は、韓国の朴槿恵大統領です。全ての国民が、自分達の投票で選んだ大統領である彼女を悪し様に罵り怒っています。

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自分達が選んだのだから、自分達にも責任があるだろうし、そこまで非難するというのは天に唾することにならないか?と私などは思うのですが、この問題が選挙権を行使した国民の責任論に至らないところが、この国の民主主義の限界かも知れません。

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一方で、米国ではあまり人望があるとは思えない人物が大統領に就きます。私の独断と偏見で言えば、過去に選挙で選ばれた大統領の中では最も人望のない人物かも知れません。 しかし、そのトランプ氏も選挙で選ばれたのですから、相当の支持者はいて、人気はあるのでしょう。しかし、果たして人望はどうなのか?人気と人望は違います。在任中に、彼の人気を人望に転換できるか否かで、トランプ氏の鼎の軽重が問われることになります。 

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では人気と人望はどう違うのか? どちらも抽象的で曖昧ですから、明確に定義して比較することはできません。 しかし、私の解釈は以下の通りです。

人望:周囲からその人の人格が尊敬され能力が信用された時に得られるもの。

彼の下で働きたいとか、彼をリーダーにしたい・・と思わせる何か。

基本的には損得勘定や打算は抜き。

人気:好意的な感情には違いないが、人望より浅い感情。

しばしば打算や損得勘定も影響する。

その人の思想や人格に敬服する・・といった深い理解は前提としない。

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民主主義が未熟な国で選挙をすれば、人望よりも人気で票が集まります。いえ、外国のこととは限りません。 日本も同じです。 参議院選挙でも、政策も公約も持たない知名度だけのタレント議員が多数当選しています。

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そして民主主義の成熟した国でも成熟していない国でも、しばしば大衆受けを狙った人気取りの政策が行われます。それらはポピュリズムの現れですが、人気取りの政策では、文字通り人気は得られますが、人望は得られません。

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では人望が全てか?といえば、そうでない場合もあります。

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かつて日本では、人望を超越した存在として天皇が存在しました。

「天皇ハ神聖ニシテ侵スベカラズ」と明治憲法にありますが、現人神であれば、人望だの親近感とは無縁で、ひたすら畏れ崇める対象とでした。

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しかし、その天皇陛下も人間宣言をして、国家の象徴ということになれば、人々から親しまれる存在に変貌します。今上天皇が口にされる「国民とともにある皇室」は、もはや単に君臨する存在ではなく、国民からの信頼と人望がなくては皇室も天皇も存在しえないという意味だと思います。

これは日本だけではありません。日本とは全く形態が異なるので、単純比較はできませんが、英国の王室も同じようなものです。 国民から親しまれ、支持されなければ、存立しえない存在です。

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昭和天皇は、その公平無私なお考えと謹厳さゆえに国民から尊敬され、“人望”がありました。 タイのプミポン前国王も似ているかも知れません。 

今の天皇陛下と皇后陛下も、“人望”という点では問題ないでしょう。多くの国民から敬慕の念を持たれています。

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しかし、その後の世代が少し心配です。今の皇太子殿下と皇太子妃殿下が天皇と皇后に就かれた際、これまでと同じように、国民から敬慕の念、或は“人望”を得られるか、甚だ心配なのです。 

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今の皇太子殿下は皇太子妃の雅子さんにプロポーズする際、「あなたを守ります」と約束したそうです。 彼女を一体何から守るのでしょうか? まさか国民から?

彼が守るべきは国民であり、国の社稷であるはずですが、優先順位は雅子さんの方が上なのか?

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そして問題は皇太子妃の方です。彼女に皇后として国母になる覚悟があるか?という点が問題です。民間出身で皇太子妃となった今の皇后陛下には、ある種の覚悟“がおありでした。嫁いだ後は、一度も実家の正田家に里帰りされていません。

無論、ご病気という事情もありますが、雅子さんからは、その“覚悟”が感じられません。 しかし人望を勝ち得るにはその“覚悟”が必要なのです。

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今、世の中は、今上天皇のご高齢と健康に配慮して、生前退位の検討が進み、元号も変えようという話になっています。しかし、本当に重要なのは、これから国父・国母と仰ぐ方々に“覚悟”があるかどうかであり、国民からの人望が得られるか否か・・・だと思います。


【 産業の老いる日 その2 】 [鉄鋼]

【 産業の老いる日 その2 】

その現象は、まず大学のキャンパスで、あるいは高校の教室で起こります。 最初に学生や生徒が、自分の専攻分野として、鉄鋼・冶金・金属を選ばなくなります。 それから10年、20年後に、その分野での研究成果が減っていきます。学会が盛り上がらなくなります。 同時期に各企業の設備投資や研究開発費が減っていきます。 最後に企業の利益が減り、産業全体の規模が縮小していきます。米国ではその現象が起こりました。

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米国ではかなり前から、優秀な学生が鉄鋼業界に集まらなくなっています。30年ほど前に聞いた話ですが、エリート中のエリートとも言えるハーバード大学ビジネススクールを卒業したMBAの新人は、当時大会社であったUSスチールに誰も入らなかったのです。 

では理工系の学生達はどこへ行ったのか? IT業界でベンチャーを立ち上げたり、金融の世界に入る人もいます。 そして医学部へ進み医師になる人も多くいます。実際に物を作る機械や材料の分野は・・・あまり人気がありません。アメリカにも3Kの業界を嫌う傾向があるようです。

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一方、泥臭い技術の塊りである鉄鋼業界の方も、逆に学校秀才を敬遠したようです。ニューコアの創業者で伝説的な経営者であるケン・アイバーソンは、その自叙伝の中で、ニューコアとMBAとの相性が良くない・・と語っています。ものづくりの原点から離れたところで勉強した秀才は、製鉄所には不向きだったというのです。

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実は同じことが、大手高炉メーカーだったLTVでもありました。外からスカウトしたMBAは製品の値上げで、短期的に収益を上げることはできても、長期的な視野で製造業のビジョンを描けなかったのです。四半期毎の決算報告で瞬間的に良い数値を出せても、産業全体を見渡したり、長期的な計画を立てることができませんでした。

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アメリカの製鉄会社は研究開発部門を閉鎖し、そこにいた優秀な研究者は大学の教授に転じました。しかし、そこで研究が継続した訳ではありません。カーネギーメロン大学でもピッツバーグ大学でも、イリノイ大学でも、研究のスポンサーは製鉄会社です。産業の縮小は大学の研究にも影響を与えました。 そしてその大学の研究室で実験をして論文を書いていたのは、もっぱらアジアからの留学生です。彼らは研究がまとまると母国に帰ってしまい、米国での研究は、教授の引退とともに途絶えてしまいます。

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私は、自分でいうのもおこがましいですが、20年ほど前、重厚長大産業の衰退を米国と英国で見てきました。閉鎖されて錆びついた製鉄所、従業員の過半数がリストラされ、ガランとした厚板工場の事務所。閉鎖され、窓ガラスが割れた製鉄会社の研究所の建物。

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アメリカの現状は厳しい・・。20年ほど前、そう考えた私は、学会でシカゴに来られた京都大学のM教授にそのことを訴えました。M教授はマルテンサイト変態の研究で知られる気鋭の研究者でした。その後、住金の顧問や鉄鋼協会の会長も経験されています。

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シカゴのステーキハウスで夕食を取りながら、私は

M先生、米国の鉄鋼業は衰退の傾向にあります。まず若い人が鉄鋼業界を目指さなくなり、それが時間差を置いて、ボディーブローのように鉄鋼業の弱体化を招いています」 と言いますと、M教授は、

「それはね、日本でも起こりつつある問題だよ。まだまだ日本の鉄鋼各社は元気で、研究開発も盛んにおこなわれ、世界の鉄鋼業界をリードする立場にあるけれど、若い学生たちに、金属・冶金・鉄鋼の人気が無くなってきている。米国の現象と同じように、時間差を置いて、将来、鉄鋼業全体で、研究開発の低迷や、世界での日本鉄鋼業の地位の低下が懸念されるよ」

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京都大学のM先生は、その状況をひしひしと感じて危機感を持たれていました。

京都大学の工学部で、入学試験の合格ラインが低いのは金属工学科でした。東京大学の理科一類からの進学先で、金属工学科は早くから「底なし」でした。つまり、定員割れをきたし、成績順で選んだ場合、誰でも入れるという状態でした。

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M先生は 「だから学科名から、金属だの冶金だのという名前を廃して、材料工学とかマテリアル工学という名前にして、研究対象を広げたり、視点を変えたりしているのだけれど、あまり効果はないのだよ」

私は 「どうも金属とか冶金というと、実験はきついし、あまりスマートではないし、学生に敬遠されるのですね。 私の友人などは、長時間かかる平衡実験のために寝袋を抱えて、実験室に泊まり込む冶金の学生を揶揄して、『彼らは冶金専門で鉄屋を目指すと言うけれど、本当は夜勤専門で徹夜を目指しているのさ』と言っていましたよ」

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M先生は、「いや言葉遊びの問題ではない。僕だって、学科の名前を変えたところで、それで希望する学生が増えるなどとは考えていない。本当は金属学の面白しさと奥深さを学生や生徒に説明して理解してもらう事が重要なのだが・・・・。実験が大変なのは、理工系ならどの分野でも同じだよ。 根気と辛抱が必要なのはどの学問も同じだよ。でも、このまま金属・冶金を希望する学生が減っていったら、大学の研究室は外国からの留学生ばかりになってしまうね」と語って、肉の塊をパクリと口に入れました。

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実はこの問題は、金属・冶金だけの問題ではありません。日本では、理科系の大学を目指す高校生が減りつつあります。その理科系の学部でも人気のある医学部や、理学部、農学部に比べて、工学部の人気は低落傾向にあるそうです。

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理科系に進んだ、私の愚息二人を引き合いに出すのも、おこがましいのですが、一人は農学部、一人は理学部に入り、工学部には行きませんでした。

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今、日本鉄鋼協会の雑誌「鉄と鋼」や「ふぇらむ」を読むと、日本の金属学や鉄鋼の研究は、依然盛んです。 私が言うのも生意気ですが、研究レベルが低下しているとは思えません。 でも、1980年代のように革新的な技術が次々に出現する時代でもなさそうです。そして大学の研究室を覗くと、昔、米国の大学で見た景色と同じで、そこでは多くの留学生が活躍しています。 M教授が予測した通りです。

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強い既視感を感じながら、M教授の言葉を思い出します。

「本当は、金属学の面白しさと奥深さを学生や生徒に説明して理解してもらう事が重要なのだが・・・・」。

日本の鉄鋼業が、米国や英国の鉄鋼業の轍を踏まないために、行うべき事は多くありますが、時間的余裕はあまり無い・・・・。私はそう思います。


【 産業の老いる日 その1 】 [鉄鋼]

【 産業の老いる日 その1 】

 

今年の14日付けのAMM紙(American Metal Market紙)を読んでいたら、面白いことが書いてありました。 アメリカの鉄鋼産業には2017年問題とも言うべき問題があるというのです。それは鉄鋼各社で、今年、経営幹部から中間管理職、ベテランの作業員まで含めて、大量の定年退職者が出て、大幅な人事の刷新が行われる問題です。

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1980年代初頭、レーガノミクスで米国の景気が一時的に好くなった時期に、大量に就職した人達が定年を迎え一斉に退職するのです。記事の題名は“Steel moves a step closer to retirement ‘bomb’” というもので、2017年に発生する大量退職問題を時限爆弾に例えています。

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定年を迎える人が多いという、その点だけを聞くと、職場の若返りは結構なことじゃないか・・と思いますが、ことは簡単ではありません。

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米国の会社は業務の引継ぎや技術の伝承がシステマティックにできない場合が多いのです。会社側は技能や技術伝承のための教室まで設けて対応しているとの事ですが、そううまく行くとは思えません。ノウハウを失う製鉄会社は一時的に相当の戦力ダウンとなるでしょう。

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そしてもうひとつはいわゆるレガシーコストの問題です。退職者は会社と縁が切れる訳ではなく、退職者の年金(ペンションプラン)負担や医療保険負担が会社にのしかかります。現在働いていない人達のコストを会社が負担するのです。

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オバマ大統領が考えた一種の国民皆保険制度(いわゆるオバマケア)は、米国の医療保険制度を根本的に見直すはずでしたが、トランプ次期大統領はそれを反古にする考えです。会社が退職者のために負担するコストは減らないでしょう。そしてその退職者が2017年に一斉に増えるのです。一部のミニミルを除き元気がない米国の鉄鋼産業にとって、2017年問題は頭の痛い話だろうと思います。

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それでは、日本の場合はどうだろうか?と考えます。日本はやはり米国と違います。年金負担は、一企業の問題というより国全体の問題として捕らえられています。定年を迎える人達の意識も違います。 私オヒョウも含めて、定年後も働こうという人が多くいます。会社から請われて嘱託や顧問で残る人も多くいます。(勤労意欲旺盛ということもありますし、定年から年金受給開始までの間の収入確保という事情もあります)。 団塊の世代の退職もそれほど一斉ではありませんし、技術・技能の伝承も外国よりはうまくいっています。 それでもベテランの退職に伴うロスは大きく、技術・技能の伝承は、鉄鋼各社の大きな課題です。

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高炉の操業技術などは、AIを活用して、技術伝承を進めています。語り部となるベテラン作業長から聞き手の技術者がノウハウを聴き取り、それをLISPPROLOGといった言語のプラグラムで、コンピューターに移植し、ノウハウの喪失を防ごうとしました。数万ステップに及ぶプログラムでベテラン作業長の知識・経験を全て網羅できたかは不明ですし、人工知能そのものも、現在あるIBMのワトソンなどと比べれば素朴なもので限界があった訳です。

しかし、この現代の太安万侶と稗田阿礼の努力のお陰で、米国の2017年問題のようなことは防止できています。

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しかし、人材に関して問題は無いのか?と言えばおおありです。 鉄鋼産業に於ける人材の問題は、先進国共通で、良質の人材は枯渇しつつあるのです。 そして人材の枯渇こそが産業を衰退させるのです。

 

そのあたりの事情については次号で管見を述べたいと思います。


【 無人潜水艇奪取 その2 】 [中国]

【 無人潜水艇奪取 その2 】

 

昔、中国の漢級の原子力潜水艦が日本の領海を侵犯し、海上自衛隊に追いまくられたことがあります。 自衛隊はソノブイなどの探査装置を駆使して、一度も潜水艦を見失わず、一方、潜水艦は難しい海底地形を一度も間違わずに操艦して、日本の領海を脱出しました。 双方あっぱれな実力を示す機会となったのですが、その時、中国側の対応がちょっとした話題になりました。

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中国海軍は問題の海域に水上艦を派遣し、日本のP-3Cが投下した使い捨てのソノブイが沈む前に、せっせと回収して自国に持ち帰ったというのです。ソノブイの中身は海中探査用のソナーと無線通信装置です。それほど高度の機密が入っているものではありませんが、中国にとっては貴重な取得物であり、情報源だったのかも知れません。 この行為は厳密にはドロボウですが、日本側に回収の意図はなく、やがて沈む運命だったので、それを回収しても、文句は言えないですね・・・と元海上自衛官は苦笑いします。

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中国軍はいろいろなところでゴミを漁り、情報を集めています。 航空機の例を考えます。 

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実は歴史上ただ1回だけステルス戦闘機が撃墜されたことがあります。 コソボ紛争の際、米国のF-117が撃墜されたのですが、中国はその残骸を手に入れました。

また、オサマ・ビン・ラディンのパキスタンの屋敷を急襲し、彼を殺害した際、ステルス性能があるヘリコプターが1機不時着して放棄されましたが、この残骸も中国がちゃっかりと入手しています。 それによって、ステルスの技術を習得し、中国はステルス戦闘機J-20を開発したとされています。実際にはそのステルス性能(レーダーに映らない性能)には疑問符がつきますが、いずれにしても過去の米軍兵器の残骸をうまく活用して自分の武器開発に役立てています。

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その手の情報収集は、全ての国家が行っており、中国だけがそういう情報収集手段、(つまり、拾い物や、盗んだ品物から機密情報を漁る方法)をとっているではありません。 しかし、白昼どうどうと、明らかに他人の所有物である装置を横取りする・・という神経は、中国ならではかも知れません。

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そういう強引な行為を可能ならしめるのが、国家の実力だ・・と考えるなら、やはり厚顔無恥のそしりを免れません。 あるいは恥ずべきことと承知で、行っているのかも知れません。でも、あの無人潜水艇にそれほどの価値があるとも思えませんが・・・。

 

今年はやったTVドラマの名前 「逃げるは恥だが役に立つ」をもじって言えば、「拾うは恥だが役に立つ」というところでしょうか?

これを中国語で言えば、どうなるのかな?とくだらないことを考えます。

揀東西是害羞很多 可是有用 でしょうか?

それとも

偸盗東西是害羞很多 可是有用 でしょうか?


【 無人潜水艇奪取 その1 】 [中国]

【 無人潜水艇奪取 その1 】

どうにも理解に苦しむことがあります。いささか旧聞になりますが、なぜ、中国海軍は、公海で調査中だった米軍の無人潜水艇を横取りしたのか?

http://www.msn.com/ja-jp/money/other/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%80%81%E7%84%A1%E4%BA%BA%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E6%A9%9F%E3%82%92%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AB%E8%BF%94%E9%82%84%E3%80%81%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%81%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%82%92%E9%9D%9E%E9%9B%A3%E3%81%AE%E8%AC%8E/ar-BBxqdfj#page=2

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不思議に思うのは以下の点です。

1 重大な軍事機密が、あの小型の潜水装置があるとは、考えにくいこと。

  多分、海の深さ、水温、流速、塩分濃度ぐらいを測定していたのでしょう。

無論、それらは潜水艦の行動には非常に重要な情報ですが、なにも米軍の

測定装置を奪わなくても自分で測定すればいいのです。

2. 誰の目にも国際法違反のドロボウ行為であることが明らかなこと。

  今回、奪取時のビデオ映像は公開されていませんが、まさに米軍の母艦が

回収しようとしたところに中国艦が割り込んできて、あっという間にさらっていったとのこと。

それは事実でしょう。なぜなら、中国当局はこの点について反論していません。

言い訳のできないドロボウ行為を白昼どうどうと行う神経が不可解です。

3. 米国の政権の変わり目の微妙な時を選んでなぜ、こんなセンセーショナルな

行動にでたのか? 米中関係を考えた場合、中国にとって最悪のタイミングです。

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特に問題なのは、3番目です。

米国は大統領交代の時期にあり、外交方針も大きく変わる可能性があります。米国との関係がギクシャクしているなら、それを機会に改善したいと思うのが当然でしょうし、少なくともトランプ次期大統領の方針が明確になるまで様子見・・というのが普通の考えでしょう。

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有能なビジネスマンとされるトランプ氏は、硬軟とりまぜた外交方針、アメとムチを使い分けた政策で、外交交渉に臨む可能性が大です。

中国が為替操作をしていると非難し、南シナ海での中国の暴挙を批判する一方で、新しい駐中国大使には習氏の老朋友をあてるという配慮もします。台湾の総統と電話会議して、「2つの中国論に縛られる必要はない」と喋る一方で、それは中国との外交交渉でのカードであることを匂わせています。 交渉を有利にするなら、親中か反中かを最初から明確にしない方がいいのです。

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そしてトランプ氏は僅差で大統領選挙に勝ったものの、米国民全体の支持と取り付けたとはとても言えない状況です。そういう時は、相手の出方を見るのが中国流です。外交方針が明確に見えてから、行動するなり、意見表明すればいいのです。

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然るに、今回は中国側が誰の目にも明らかな不法行為を行ったために、トランプは中国批判に回るしかありません。怒りまくった様子をネットに公開し、多くの米国民もそれを支持して団結し、トランプの支持率とともに対中国強行論者の支持率が上がります。

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ヒラリー・クリントンが当選していたら、中国のロビイングが奏功するかも知れませんが、トランプではそうはいきません。全く大事な時に余計なことをしてくれたものだ・・と北京の中国外交部は思ったに違いありません。 中国の報道官は、「落ちていたものを拾ったら、誰でも中身をあらためるではないか? これは当然のことをしただけだ」と説明しますが、そんな理屈が通るとは、彼女自身も思っていないでしょう。こんな無理筋の抗弁をせざるを得ないのは、後ろめたさを感じている証拠です。

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問題の無人潜水艇は、極短期間で米国に返還されました。 米国の反応が予想以上なので慌てて返すことにしたのは明らかですが、ほんの2日では分解して中のデータを解析することはできなかったでしょう。多分、露出した各種センサー類からどの情報を収集していたかを確認しただけでしょう。

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実はこの問題の本質は、潜水艇の情報ではなく、中国の人民解放軍の指揮系統がどうなっているかです。前述の通り、最悪のタイミングで暴挙に出た訳ですが、報道官の苦しい説明から察するに、政府の外交部や共産党の中央政治局は、潜水艇奪取の命令を出さず、その報告も事後報告だったのではないか?ということです。

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これこそが最大の問題であり、憂慮すべき事柄です。中国の人民解放軍は国軍ではなく共産党隷下の組織です。そのためかある種の独立性と発言力を持ちます。微妙なのは国家主席の交代時です。全ての権限を禅譲したはずなのに、前の為政者が人民解放軍の指揮権だけはなかなか手放さないということがあります。権力争いが生じた際、人民解放軍がキャスティングボードを握ることもあります。

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習国家主席も人民解放軍の指揮権を手にしてやっと権力を掌握した形になりました。その事は、逆説で言えば、共産党の中央政府が軍におもねる可能性もあるということです。それをうかがわせる事情があります。今中国のGDPの伸びは鈍化しつつあり、6%程度の安定成長に移行しつつありますが、軍事費の伸びは、それと乖離して10数%と、大きく突出しています。多分、軍のご機嫌をとらなければならないのです。 そういう状態が続くと、やがて軍隊が暴走する可能性があります。

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既に20世紀に世界はその悪夢を経験しています。日本で言えば、政府方針に反して、大陸での戦争を拡大した関東軍、統帥権の干犯という屁理屈で組閣を妨害した陸軍が存在しました。中国だって中華民国の時代、軍閥が割拠して統制がとれない状態が続きました。

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軍事政権がいけないのではありません。軍人が首班でもいいのです。問題は文官が内閣の首班だったり大統領の時に、配下の軍人達が勝手な行動を起こすことです。その場合、独断専行を行う軍人はしばしば全体を見渡せず近視眼的に行動するのです。

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それに加えて中国固有の問題があります。組織内の命令指揮系統が不明確だったり上意下達が徹底できないことがあるのです。かつて中越戦争で中国人民解放軍がベトナムに攻め込んだ際、勢力では圧倒的に優っていたのに敗北した理由は指揮系統がはっきりしていなかったためとも言われています。現場がかってなことをして、偶発的に紛争が始まり、大戦争に発展することを恐れます。盧溝橋事件もそのひとつか?

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指揮系統の乱れを危惧させる例としてレーダーロックオン事件があります。中国軍の艦艇や航空機が、自衛隊機に対してレーダーを照射しロックオンした事件は、最終的に誰が命令したか不明です。 現場の勝手な判断によるものかも知れません。国際慣行としてレーダーロックオンは明確な敵対行為であり、反撃の理由となることを、末端の将校や下士官が知らずに行った可能性があります。

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最近、宮古島の沖の上空を通過する中国軍機が自衛隊機に妨害弾を発射されて、迷惑したという抗議が中国外交部から来ましたが、これもロックオンに対して、自動的に(または手動で)フレアダミーを放出したものではないか?と言われています。

https://trafficnews.jp/post/61361/

(真相は藪の中ですが)。 フレアダミーは熱戦追尾型ミサイルの追撃をかわすために放出する花火ですが、もしそうなら、これも中国軍機が不用意にレーダーを照射したことに起因するもので、責任は無知な中国機の乗組員側にあることになります。

(中国は認めないでしょうが・・・)。

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そもそも、妨害弾・・とは何か? 多分フレアのことでしょうが、軍事用語に疎い外交部の報道官が軍から届いた連絡をよく理解しないまま、日本への抗議として発表しているのでしょう。 

日本と中国には、偶発的な衝突を避けるためのホットラインがまだありません。しかし、中国の場合、自国の政府と軍の意思疎通ができていないのなら、何をかいわんや・・というところです。

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しかし、今回の事件は中国海軍の現場の統制や意思疎通の問題ではない・・という意見もあります。 それについては次号で管見を申し上げます。


【 インターネット情報をどう扱うか その2 】 [インターネット]

【 インターネット情報をどう扱うか その2 】

 

米国では医師医学研究者により、インターネット情報を検証したり、それを鵜呑みにすることの危険性を訴えるキャンペーンが進んでいるそうです。

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きっかけはAIDSの潜伏期間についてのインターネット情報が不正確で、それを鵜呑みにして、AIDSに感染したのにしていないと錯覚するおそれがあることを、ある医師が指摘したことです。

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米国では、依然AIDSの問題は深刻です。いや、逆説で考えると、深刻に考えていない日本の方が実態は深刻かも知れません。先進国でHIV陽性の人が増加傾向にあるのは日本だけだそうです。一方で検査を受ける人の数は少ないままで、把握されていない感染者はさらに多そうです。

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しかし、一方で、増加しつつあるのはAIDSだけでなく、梅毒などの他の性感染症も増加傾向にある・・という指摘もあります。 他の性感染症も増えているのだから、AIDSの増加だけを特別に扱うのはおかしい・・という奇妙な意見もあります。 でもやっぱりAIDSは大きな、そして不気味な問題です。

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話を元に戻します。

アメリカで問題となったAIDSの潜伏期間の情報は、現在、医療関係のインターネットの主要サイトでどのように説明されているか?と思い、調べてみたら、以下の状況です。(私も暇ですね・・)。

 

wiseGEEK                   1月~6ヶ月

WebMD                    2週間~6ヶ月

eHow                      ~10

Arkansas Department of Health  6週間~6ヶ月

PubMed                40日~60

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これではあまりにバラつきが多すぎて、どの情報を信用すればいいのか困ります。

しかし、よく見ると、Arkansas のように、ある説明は、HIV検査が陽性になるまでの期間を示しており、ある説明はAIDSの症状が発症するまでの期間を示しているなど、潜伏期間(the incubation period)の定義もまちまちです。

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どうやらどの説明もそれなりに根拠があって正しいようですが、私のような素人が見ると混乱してしまいます。 切実な事情があってAIDSの潜伏期間を知りたい人(つまり思い当ることがある人)が、インターネットでそれを調べた際に、誤解してしまう可能性は確かにあります。 これらは質の悪い情報と言うべきでしょう。

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では、AIDSの潜伏期間を誤解し、感染しているのに感染していないと錯覚し、その為に治療開始が遅れたり、あるいは他の人に感染させてしまった場合、誰が責任を取るのでしょうか? 考えてみると、著者が特定されず、料金も徴収しないインターネット情報に責任を求める訳にはいきません。

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アメリカはご承知の通り、訴訟社会で何事についても責任追及の厳しい社会です。しかし相手が特定されなければ、訴えることもできませんし、弁護士も動きません。

一方、責任を伴う、署名された情報については、いつ訴えられるか分かりません。だから情報は厳密・正確になりますが、同時に有料になり、煩わしく高価なものとなります。

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しばしば「日本人は、安全と水を無料だと考えている」と揶揄されますが、考えてみると「人々は情報を無料だと考えている」と言うこともできそうです。これは日本人に限らず、目に見えないものにお金を払いたがらない多くの人に言えますが・・・。 「本来情報とは高価なもので、知的財産権も蔑ろにしてはいけないのだ」と権利意識に敏感なアメリカ人は言うかも知れません。

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しかし、それではあまりに窮屈だということで、無料のWikipediaが、有料情報のアンチテーゼとして登場したのだと思います。 でも責任を伴わない情報供給には、やはり限界があります。Wikipediaにも問題がありますが、医学情報をまとめたキュレーションサイトにはさらに問題があります。今回のWELQの閉鎖は多くの意味で象徴的です。

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第二次大戦後、一貫して日本の産業は工業製品や農産物、サービスの質の向上に取り組んできました。 経済発展と工業製品の質の向上は、車の両輪のように回っていました。 しかしその間、情報の質はあまり上がっていません。平気で嘘を垂れ流すマスコミ、誇張し偏った情報で世論誘導を図るマスコミ、専門知識を持たない人が、著作権を無視して不正確な医学情報を流すインターネット・・・・は、まだ存在します。

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かつて工業製品の品質向上活動が成功したように、何時か無料情報の品質も向上しようという社会運動が始まれば、質の悪い情報は淘汰され、世の中には信頼できる情報だけが溢れるでしょう。それは、正しい情報を求める多くのガン患者とその家族には歓迎されるでしょう。 その時、南場智子氏の慚愧の涙は報われるのかも知れません。

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その頃、いい加減な記事を書き飛ばしている「笑うオヒョウ」はとっくに淘汰されているでしょうが・・。


【 インターネット情報をどう扱うか その1 】 [インターネット]

【 インターネット情報をどう扱うか その1 】

 

先日、ある病院で私はMRIの検査をしてもらうことになりました。担当の医師からは「造影剤を注入しますが、その了解をお願いします」とのコメントです。MRIの造影剤? とっさに理解できなかった私は「それはどういうものですか?」と尋ねました。

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ご承知の通り、MRI(核磁気共鳴)とは、回転磁場をかけて、原子核の磁気双極子モーメントと共鳴させ、磁場を消した後の緩和時間の差から、主に水素原子の濃度分布を調べて、画像として取り出すものです。水素原子の濃度差を画像化するので、骨などでない柔らかい組織の検査に向いています。 

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XCTなら、バリウムなどの放射線を遮る物質、或いは自身が放射線を出すラジオアイソトープなどが造影剤になりますが、MRIの場合に造影剤などあるのだろうか? 

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私が尋ねると若い医師は「ああ、造影剤ですか?ガドリニウムですよ。ラジオアイソトープではありませんし、短時間で体外に排泄されることが確認されています。ご心配なら、ネットで確かめてください」と言って、パソコンの画面を私に向けて、自身でガドリニウムを検索して、説明するサイトを見せてくれました。

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「まあ、本当はインターネット情報がどこまで信用できるか・・という問題はありますが、この記事についてはまず大丈夫でしょう」。先生は自分が説明するより、患者が文字を追う方が早いということを認識しています。

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私は造影剤の性質と体への影響について確認した後、二三、先生に質問してから造影剤使用に同意し書類に署名しました。しかし、医師が漏らした、「ンターネット情報がどこまで信用できるか・・」という点は、心にひっかかりました。

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インターネットは素晴らしい情報検索手段です。特に自分の専門外のことを浅く広く調べるには適しています。百科事典として考えると実に便利で安価です。

しかし、その情報は玉石混交です。昔の出版社の紙の百科事典は、高価でしたが著者名が記載されており、内容は信用できました。逆に信用ある事典や辞書の著者に名前が登場するから・・という事で研究者が信用されたりもしました。

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一方、インターネットはそこが心配です。Wikipediaは多くの人の善意に基づいて編纂されていますが、著者は不明です。真偽は確かめようもなく、虚偽の記載であっても誰も責任を取りません。

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造影剤の説明をした若い医師は、「インターネット情報は手軽で便利だけれど、それを使いこなすには、真贋を見抜く力量というか専門知識が必要だ。ここは、医師である私が検索して責任を持って、ネット情報を提供しましょう」と言いたかったのでしょう。

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Wikipediaの記事に誤謬があっても、大きな問題ではありません。 専門家の中には自分の専門分野でWikipediaの記載内容の間違いを発見して喜ぶ人がいます。あまり上等な趣味ではありませんが、私も一つ発見したことがあります。

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しかし、医療関係の情報を伝達するキュレーションサイトの記載内容が杜撰なら、これは罪深いことです。なにせ人の命に関わることですから・・・。

そもそもキュレーションサイトなるもの、胡散臭さの塊です。キュレーションサイトとは方々のサイトにある情報をつまみ食いして編集者の個人的見解で要約したものですが、必ずしも専門家が要約するとは限りません。 作成者に大きな問題があります。

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実はある情報群が存在する場合、それを要約するのは非常に難しい仕事であり、全体を見渡す知識を持ち、総合判断できる専門家でなくてはできません。 それを素人が行う事自体危険です。

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利用する側にも問題ありです。 自分で調べて考えるのが億劫な人が、横着をするためのサイトがキュレーションサイトですが、そもそもそんな横着をする人は、情報の真贋を確かめる労力も惜しむでしょう。

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運営する側も胡散臭さの塊です。情報検索者が専門のサイトに直行したり、正統な論文にアクセスするのを妨害するかのように、キュレーションサイトに誘導することがあります。これは一種の詐欺に近い行為です。

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そして、それが医学・医療関係の情報であれば、情報を必要とする患者本人やその家族に間違った情報が伝わり、最悪の場合は命に関わります。

私は医学・医療関係のキュレーションサイトは、医師のみが作成・編集に当たるべきであり、著者と編集人・発行人の名前を記載すべきだと思います。

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そしてDeNAの杜撰なキュレーションサイトWELQが問題として指摘され、それらを閉鎖することになりました。南場会長というか前社長も記者会見に登場し、神妙かつ沈痛な表情です。 あれっ?これはどういうことだ?

http://www.sankeibiz.jp/business/news/161210/bsj1612101612001-n1.htm

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彼女はマッキンゼーでは大前研一の一番弟子で、自分の会社DeNAを成功させ、横浜ベイスターズのオーナーとしては、今年Aクラスいりを果たすなど、順風満帆・得意満面なはずです。それなのに憔悴しきった表情です。それは記者会見の2日前に、長くガンを患っていた夫を亡くしたからだ・・と、報道で知りました。彼女が憔悴していたのは、DeNAの不祥事ではなく、看病していた夫の死が原因だったのです。

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それなのに、会見に列席した気丈な彼女に残酷な質問が飛びます。

「ガン患者の家族として、キュレーションサイトWELQの情報を活用したか?」

彼女の答えは、「医学論文を読んだり、ガン患者やその家族のブログは読んだが、WELQは見なかった。後で内容を知り愕然とした」

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これは正直な回答であると同時に、彼女の聡明さを示すものです。彼女なら専門的な医学論文も読解できるでしょうし、現実に病と闘っている人のナマの情報の貴重さも分かるでしょう。正しく価値のある情報を知っているのです。一方で無責任で怪しげな情報を見抜き、それに近づかない・・・というのも、一つの知性です。

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彼女が理性的で合理的な情報収集をしている・・ということは分かりますが、自分の会社の商品とも言うべきWELQの情報に愕然とした・・という表現は、自分の会社を否定し引導を渡すことを意味します。 彼女は夫を失い、そしてわが子のようなDeNAの一部を葬ったのです。

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こと、医学については、インターネット情報の問題は大きい・・と私は思います。

そこでふと考えます。

「米国の事情はどうだろうか?」

IT関連の問題や動きは、日本より先に、米国で発生します。この種の問題は当然、既に米国で発生しているはずです。

 

次回は、それについて管見を述べたいと思います。

 


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