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【 55歳の官僚 】 [政治]

【 55歳の官僚 】 

厚生労働省の村木厚子女史の無罪が確定し、職場に復帰しました。小柄で華奢な女性が、検察の厳しい追及に耐えたというのは驚きで、実にタフな人だと感心しますが、考えてみれば、体格は関係ありませんね。 冤罪が晴れて、にこやかに笑う村木さんを見て、まさにご同慶の至りです。

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刑事被告人だった間は休職中だった厚生労働省に、一年半ぶりに帰ってきた訳ですが、厚生労働大臣は「有能な人であり、局長級以上のポストを用意して迎えるべきだ」と語りました。 

しかし本省局長や審議官のポストに空きがあるはずもなく、内閣府政策統括官というポストを新設してそこに就く事になりました。

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しかし、これはおかしいのではないか?とオヒョウは考えます。これまで、そのようなポストはなくても、ちゃんと役所は廻っていたのです。正確には、問題の多い厚生労働省で、“ちゃんと廻っていた”か疑問ですが、少なくともそのようなポストがなければ国家が困るという事態ではなかったのです。

これまで無かったポストを設けて、彼女に何をやらせようというのか?

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ここにお役人の世界の、不可思議な常識があります。

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普通、民間では職に就くと仕事が与えられます。官では、職に就くと、地位と権限が与えられます。仕事はその後です。まず、遇すべき人物というのがいて、その人にふさわしい待遇を考えるのが、古来お役所の世界です。 

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民間企業の給料は労働の対価ですが、役人の俸給は、その人物にふさわしい生活を維持するために与えられる扶持であり、働きとその成果にリンクしたものではありません。

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彼女の場合、次官候補のレースに53歳まで残っていた人です。人によっては彼女を次官候補と考えていた人もいるそうです。その人物にふさわしい地位を・・という事であり、民間企業なら役職定年になる55歳の人に新たな活躍を期待する訳ではないでしょう。

彼女の同期は、彼女が刑事被告人である間に多くは勇退したり天下りをしているはずです。彼女は偶然にもその間にブランクがあったために生き残っているのです。 国家が彼女に期待する仕事はそうはないはずです。

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これは、お役所の無駄を省き、公務員の数を減らし、人件費の総額を2割減らすとする民主党の公約に全く反する話です。人がいるから仕事を作る・・というパーキンソンの法則と同じ考え方は、野党時代に行政の無駄として鋭く指弾してきたところです。 おかしいではないか?

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細川律夫厚生労働大臣も、政治家ですから人気取りを考えます。日本では冤罪の被害者というのは、無条件で同情され、支持されます。まして村木さんは女性です。・・・そうなれば、彼女を厚く遇して損はないな。国民の支持を得られる・・という打算が働いた可能性は高いのです。

実際、細川さんが大臣になったのはつい最近ですから、彼女がどの程度有能だったかだなんて知る由もないのです。

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彼女は全く災難だったのですが、復職もかない、キャリアへの疵も最小限でしょう。 しかし一方で、大臣の人気取りに使われているかも知れません。

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かつて造船疑獄事件で、次官確実と目されていた当時の大蔵省主計局長 福田赳夫は結局役所に戻れませんでした。無罪になった時にはすでに同期が次官を勇退していたのですから・・・。その代わり、総理大臣になり、無能な息子まで総理大臣になったのですから、どちらが良かったかわかりませんが・・・。

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普通、エリートコースを歩む人は、何らかの讒言で嫌疑をかけられた場合、やがて無実が証明されても、元のエリートコースに戻れない場合がほとんどです。時間のロスが大きすぎて、挽回が効かないからです。中国の唐時代の詩人で官吏だった人には、そんな人がたくさんいます。

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では、今回、オヒョウが大臣なら、裁判所から帰ってきた彼女をどう処遇したでしょう。 当然、民間企業の発想で対応します。

多分、一年半前の局長のポストに戻します。絶えず前進するエリートにとっては、昔と同じポストではつまらないでしょうが、しかたありません。少なくとも、一年半、彼女のキャリアは空白で、その間仕事をしていないのですから。彼女が抜けた際、後任となり得をした人、幸運な昇進をした人がいるでしょうが、彼等には、一段階ずつ戻ってもらいます。

高禄をはむ彼女の為にポストを新設するなどという愚かな事はしません。

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何の落ち度もない彼女は被害者なのに、気の毒ではないか?と思う人は多いでしょうが、オヒョウはそうは思いません。確かに被害者ですが、ある意味部下を管理できなかったという責任はあります。 民間企業でも官庁でも部下が足を引っ張ったり、讒言をしたりして、足をすくわれる人は大勢います。 気の毒でもありますが、最終的にはその人の責任とするのが普通です。

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今回の場合、彼女の部下は彼女をおとしめただけでなく、大罪を犯しているのですから、その意味で上司であった彼女は責任を免れません。

そして、もうひとつ考える必要があります。彼女は本当に有能な官僚だったのか?

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手元の資料では、彼女は「障害者自立支援法」の成立に力を尽くしたとあります。一人の官僚がひとつの法律を創り上げて、国会を通して成立させる・・というのはなかなかできない事で、その点では極めて有能な官僚です。

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しかし、そうだろうか?障害者自立支援法というのは、障害者を福祉の対象としてみるのではなく、健常者と対等に社会に参加すべき存在と考え、その社会参加が可能になるように、行政が支援しましょう・・という性格の法律です。

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そこには、健常者と障害者を対等にみなし、差別を排除しようという高邁な発想があり、あわせて施しを受ける人が労働する人に転じる事によって社会の経済的負担を軽減しようというものです。

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いいことづくめのようですが、実態は全く違います。怠け者の尻を叩いて働け・・というのに似ていて、有効な場合もありますが、働きたくても働けない人にとっては、自立せよ・・と強制するのはとても残酷な事です。

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健常者であっても、なかなか職がなくて苦労しているこの不景気な社会で、障害者に「さあ、あなたも働けるようになったのだから自立しなさい」と言われても立ちすくむだけです。 

一年半休んでいても「ふさわしいポスト」を新設してもらえる官僚にはわからないでしょうが・・。

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おそらく高知大学卒業以来、蹉跌を経験してこなかった彼女にとって、不謹慎な言い方ですが、今回の経験はある意味で貴重だったかも知れません。 これで、より不遇な人々の心や立場が分かる様になれば、彼女はさらに優れた厚生労働官僚になるかも知れません。 

でも、やはり彼女が住むのは、失業もリストラもない世界だと考えると、過度の期待はできません。


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