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【 清水市代の敗北 】

【 清水市代の敗北 】 

女流の将棋棋士の第一人者とも言える清水市代女流二冠が、コンピューターと対局して、負けたそうです。
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オヒョウは彼女のファンとしてとても残念ですし、女流とはいえ、プロの棋士がコンピューターに負けたというのも、いささかショックです。 
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捕獲した相手の駒を、任意の場所に打てるという独特のルールのおかげで、日本の将棋は複雑・難解であり、他の国の象棋やチェスとは一線を画すと言われています。 チェスとは違うのだから、チェスのチャンピオンがコンピューターに負ける事はあっても、日本の将棋は人間の方が強いさ・・という従来の考えはだんだん怪しくなってきました。 
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もともと、下馬評では清水の負けが予想されていました。以前、将棋ソフトのボナンザが、将棋界の最強棋士のひとり、渡辺竜王をかなり追い詰めた時点で、今回の結果は、ある程度分かっていたのです。 
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今は将棋ソフトの方はボナンザより格段に強くなっていますし、一方女流の棋力は渡辺竜王よりかなり低いとみられていたからです。負ける事が予想された女流棋士に、あえてコンピューターと対戦させた事について、将棋連盟の判断(特に米長邦雄の判断)に非難が集まっています。 
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いわく、男子プロが対戦して負けたら、将棋連盟の面目が丸つぶれになるので、負けても連盟が傷つかない女流を引っ張り出して犠牲にしたとか、所詮、女流棋士をイロモノと考え、コンピューターとの対局を余興の様に扱った・・という見方です。今後、男性の第一線のプロ棋士がコンピューターと対局して、どういう結果になるか・・がポイントです。 
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しかし、今回の対局では不思議な事が多くあります。新聞報道では、彼女はコンピューターに対して、中盤までは優勢だったが、ある失着をきっかけに形勢が悪化し、終盤で挽回する事ができなかった・・となっています。しかし、棋譜をコンピューターで解析した結果では、序盤~中盤はほぼ互角でしたが、後半は急速に劣勢となり、清水市代は一度も優勢にならず、一方的に負けたという評価になっています。新聞記事は、多少彼女に花を持たせた書き方なのでしょうか? 
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正確に詰みを読み切る計算という点では、はなから人間はコンピューターにかないません。人間の将棋指しでも、詰将棋に特に秀でている人(内藤國雄とか)や、光速の寄せと言われる程、正確で強い終盤を誇る人(谷川浩司とか村山聖)がいますが、コンピューターには負けるでしょう。 
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だから、形勢互角のまま終盤に持ち込まれれば、人間に勝ちはありません。人間に勝ち目があるとすれば、単純な計算ではなく、棋士のセンスが影響する中盤までに大差をつけてリードする必要があります。その事は当然彼女も理解していたはずですが、ままならなかった訳です。 
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彼女は時間配分にミスをし、終盤持ち時間がなくなったために、熟考できなかったのが敗因としていますが、そもそも、一人3時間では持ち時間が短すぎます。 
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人間とコンピューターでは最善手を決定するまでの所要時間が異なります。人の場合、持ち時間が長いほど、最善手にたどり着く可能性が高くなり、棋力は強くなります。そしてある時間以上になると疲れてきて、それ以上は強くなれません。 コンピューターは疲れませんが、能力的に読める手数に限界があります。そしてその限界手数を読むまでの所要時間は、ハードとソフトによって違いますが、人間の所要時間よりかなり短いはずです。 
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言葉を変えれば、持ち時間を長くすれば、人間に有利になり、短くすればコンピューターに有利になるという事です。 天才羽生善治だって、一手1秒の超早指し将棋をすれば、市販のパソコンソフトに負けるはずです。もし、それで羽生が勝つなら、一手0.5秒とか、一手0.1秒の超早指しにすれば、羽生は負けるでしょう。 逆に持ち時間を長くすれば、清水市代とコンピューターの棋力がバランスする点があるはずです。持ち時間の考慮なしに、どちらが強い・・という議論は無意味かも知れません。 
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今回、使用したコンピューターは、多くのCPUを並列して使用しています。これはちょっとずるいとも言えます。人間の頭は1個しかないのですから。一流の棋士は同時に何面もの将棋盤を頭に浮かべて、同時に考えられると言いますから、ある種のベクトル処理ができるのでしょう。それでもCPUは一つです。ですから、人間の方の持ち時間は、コンピューターのCPUの数だけ倍にした時間を与えなければ公平とは言えないでしょう。 
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スーパーコンピューターでなくとも、コンピューターの演算速度は年々向上しています。 パソコンの性能も毎年上がっていますが、これはハードウェアの性能であり、将棋ソフトの実力とは本来無関係の話です。しかし、持ち時間を制限した将棋では、ハードの性能が優劣に決定的な影響を与えます。 これは果たして適切なのか?本来はアルゴリズムの優劣だけが、勝敗に反映されるべきではないのか? 
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しかも、今回使用した将棋ソフトは「あから2010」といい、既存の複数の将棋ソフトを束ねており、一手ごとに各ソフトに最善手を計算させ、多数決で「次の一手」を決めるという方法です。 コンピューター特有のとんでもない悪手を防止するための有効な手段との事ですが、それなら人間の棋士の方も、複数の棋士が相談しながら手を選ぶというのでなければ、不公平というものです。もっとも、女流棋士だけで仲間を選ぶとすれば・・・里見香奈か、矢内理絵子くらいですから、あまり助けにはならない・・・。 
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不思議なことに、お正月のTVのお好み対局を見ていると、数人で相談しながら指す将棋は、一人が真剣に指す将棋より弱いようです。多数決で指し手を決めるという方法は、人間の将棋では決して実力アップにはならないのですが、コンピューターは違うようです。 
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以上、いろいろ、疑問はあるにせよ、清水市代は負けてしまいました。 
彼女はインタビューで「負けて悔しいです・・」と語っています。普通、プロの将棋指しは、負けて悔しい・・などとは決して言いません。「悔しいですか?」と尋ねるのも、全くの愚問です。勝負に負けて悔しいのは当たり前で、あまりに当然だから言わないのです。そして例え、ポーズであっても「失意泰然」を装うのがプロのマナーです。 
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それなのに、あえて彼女が悔しいと言ったのは、勝負の内容や結果ではなく、将棋連盟のメンツの為に利用され、機械相手の対局をさせられた事への、ささやかな抗議だったのではないか・・とオヒョウは推測します。

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コメント 4

夏炉冬扇

こんばんは。
彼女、ラジオで対戦前「序盤で優勢に立たないと」と言ってました。

まあ、彼女も「貸し」を作ったのかもしれませんね。
by 夏炉冬扇 (2010-10-14 20:39) 

笑うオヒョウ

夏炉冬扇様 コメントありがとうございます。

確かに彼女は、連盟に「貸し」を作ったのだと思います。
彼女は、他の女流棋士に比べれば、男性棋士の将棋連盟に対して比較的に従順な人だと、私は考えています。

しかし、本当の意味で、女流の地位を上げるためには、誰か天才少女が奨励会を突破する必要があると、私は考えております。

またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-10-14 23:49) 

左馬

初めまして、こんばんは。
あから2010は、現存の最強ソフトを集めてるのですから、
将棋連盟側も、羽生・佐藤・渡辺・谷川各先生らドリームチームの棋士合議制ならば・・・。
すいません、私が見たいだけでした><

>誰か天才少女が
本当に、どんどん活性化してほしいものですね・・・。
by 左馬 (2010-10-15 17:47) 

笑うオヒョウ

左馬様 コメントありがとうございます。

返信が遅くなり申し訳ありません。
将棋連盟側もドリームチームを編成して、棋士合議制というのは実に面白いアイデアですね。大賛成です。しかし、誰を選ぶか・・・羽生・佐藤・渡辺、それに谷川も今期好調だし、個人的には羽生に対してひけをとらない深浦も捨てがたいし、ああ、困ってしまいます。 昔はA級棋士で一括りにできたのですが。

将棋のテーマは滅多に書きませんが、ときどき雑文にしようと思います。
お読み頂ければ幸いです。またのコメントをお待ちします。
by 笑うオヒョウ (2010-10-23 00:42) 

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