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【 フランクフルターアルゲマイネ その3 シュピーゲルの翻訳 】 [鉄鋼]

【 フランクフルターアルゲマイネ その3 シュピーゲルの翻訳 】

 

1998年のその日 ロンドン駐在だった私は、ちょうどドイツのカールスルーエに出張で来ていました。用事が終わって、フランクフルトの空港へ行くために鉄道の駅に向かおうとしたところ、訪問先の人が私を呼び止めました。「今日、北の方で大きな列車事故があり、ドイツ国鉄全体のダイヤが乱れている。フランクフルト空港行きの列車が定刻に発車するか確認してあげるから、ちょっと待て」というのです。それがエシェデで発生した、ドイツの高速列車ICEの脱線事故で、100人以上がその事故で亡くなったのです。

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この事故はドイツ国鉄で戦後最大の事故だっただけでなく、高速列車ICEでの初めての大事故であり、かつ時速200Km以上の列車/電車が脱線転覆した史上初の事故だったのです。

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ロンドンに戻った私は、急いで情報を集めて日本に送ろうとしました。信じられないことですが、この列車事故は、事故発生直後の段階から、この事故は車輪の割損が原因ではないかと噂されていました。

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時速200km以上の高速鉄道で使用する車輪を製造できる企業は限られます。そして、当時、私が勤務した製鉄会社は、日本の新幹線用車輪を一手に引き受けて製造し、高速鉄道用車輪では絶大の実績があったのです。だから、ドイツの高速鉄道の車輪が破壊され、大事故に至ったとなると、速報で日本に報告せねばなりません。

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事故から数日経過し、より掘り下げた情報が必要になると、新聞は役に立ちません。フランクフルターアルゲマイネも南ドイツ新聞も、まったく無能です。私は、翌週ドイツに行った際に購入したシュピーゲル誌(Spiegel誌)の特集記事を日本に送ることにしました。 新聞よりも雑誌の方が深く、そして信用できます。

しかし、記事はドイツ語です。 さて困りました。

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既に、勤務先の会社は、デュッセルドルフ事務所を閉鎖しており、スピツキー嬢は引退して年金生活に入っています。 ロンドン事務所の秘書達は残念ながら役に立ちません。彼女達は「フランス語なら何とかなるのですが、ドイツ語は分かりません」と申し訳なさそうに英語で答えます。

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それなら、私が訳すしかないのですが、最初の1ページでお手上げとなりました。べらぼうに時間がかかるのです。かつて勉強したはずなのに多くの単語を忘れています。特に困ったのは分離動詞です。どれが分離動詞でどれが普通の動詞なのか判断に時間がかかるのです。混乱するばかりです。

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そこで私は、当時出始めていた翻訳ソフト「Accent Duo」なるものを購入し、機械翻訳に挑みました。 当時の翻訳ソフトは極めて能力が低く、実際に使い物にはならなかったのですが、同じアルファベット言語である英語とドイツ語なら、かなり精度の高い翻訳が得られるのではないか・・と思ったのです。

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しかし、それが失敗でした。 問題は翻訳ソフトの前にありました。ドイツ語の原文を入力する必要があったのです。 当然、シュピーゲル誌の記事をスキャナーで読み取るのですが、その読み取りソフトは日本製です。エスツェット(ß)を認識せず、Bと誤読します。ウムラウトも全く読めません。 これではドイツ語の翻訳に使えない・・。結局私は自分で翻訳することにしました。

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当時、ドイツの高速特急ICEは、乗り心地の点でライバルのフランスのTGVに劣っていると言われていました(事実、そうです)。 そこで騒音と振動を減らすために、特殊な車輪を採用しました。 それは車輪の外周と内周の間のゴムの輪を挟むという奇抜な車輪ですが、鉄道技術者の間では強度と剛性の点で不安視する声もありました。

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エシェデの事故は、その車輪の割損が脱線をもたらし、脱線した結果、立体交差の橋脚に車両が衝突するという事態なのです。そこまで翻訳したところで、ロンドン事務所長がしびれを切らしました。 彼は、私から口頭で説明を聞いた後、日本語のメモと、ドイツ語の原文をFAXで日本に送付してしまいました。 日本でドイツ語の記事を誰かがまじめに読解したかは不明です。

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ドイツのメディアの話から、いつの間にか鉄道事故の話になりましたが、これらは全て20世紀の話です。今は事情も変わりました。

高速特急ICEでは、ゴムの輪を挟んだ車輪の使用を取りやめました。翻訳ソフトの性能はだいぶ向上しました。 しかし、それ以前に、紙のメディアは、新聞も雑誌も衰退傾向にあり、多くの情報がインターネットで入手できるようになりました。そしてネット上の記事は、すぐに機械翻訳できます。

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今は、雑誌や新聞記事をスキャナーで取り込み、パソコンで翻訳する必要も無くなった訳ですが、変わらないものがあります。それは新聞各紙の論調です。朝日新聞も南ドイツ新聞も人民日報もニューヨークタイムスも、いまだに70年前の戦争責任について、日本を非難することに余念がありません。 最近、日本の従軍慰安婦の記事が誤まりであったことを朝日新聞は認めましたが、決して誤まりを謝った訳ではありません。

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暫くしてほとぼりが冷めたら、従軍慰安婦を既成の事実として再び取り上げるでしょう。もともとは虚偽から発生した話ですが、その時、朝日は 「だって人民日報だって南ドイツ新聞だって報道しているのだから事実に違いない」とでも言うでしょう。


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