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【 市場(いちば)を見よ 】 [雑学]

【 市場(いちば)を見よ 】

 

最近、アジア諸国の都市がどんどん近代的になっています。上海の浦東地区、ドバイ、シンガポールなどだけでなく、中央アジアの各都市にも超高層ビルや奇抜な形のオブジェのようなオフィスビルが並んでいます。

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超高層ビルが林立することが、その都会が近代的で先進的である証拠だと信じる人々は、その風景に満足します。高層ビルを建築するだけの資本が集まっているのですから、それは確かに結構なことなのですが・・・。でもそこに暮らす人にはどうなのか?

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近代的で奇抜な建築を並べることが、必ずしも都市の活力や住民の幸福に直結しない・・という反省は20世紀の中頃からあります。その例として挙がるのはブラジルの人工都市ブラジリアです。近代的で整った都市ですが、人々は暮らしにくいそうです。

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では、都市の快適さや先進性、もっと言えば都市の価値をどこで測ればよいのか?私に言わせれば、衣食住や情報、医療、とりわけ食が問題です。潤沢で質の高い食糧が適切に供給できるシステムが完備しているかが問題です。

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世界中で進行する急激な都市化や人口増大に食糧供給が追い付くのか?という疑問は、素朴に湧いてきます。

食糧といっても、長期保存や遠距離輸送が可能な穀物や食肉などは大きな問題になりません。都市生活者の食卓に不可欠な野菜類、果物、乳製品を生産・供給する、都市近郊型農業が問題となります。

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例えば、急速に都市の拡大が進む中国華東地区(上海都市圏)などは、人口増大に加え、生活水準の向上によって、食生活も欧米化、高たんぱく化、高カロリー化が進んでいます。ではその供給体制はどうなのか? 直近の資料が無いので、あくまで憶測ですが、量の問題としては、上海都市圏での食糧供給に不安は無いようです。

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アジアでも有数の肥沃な穀倉地帯である長江デルタを背後に控える上海都市圏では食糧供給量に問題はありません。それに加え、利に聡い中国の農民は機敏に高収益の作物に転換します。つまり、稲作や麦作より養豚、養鶏、魚の養殖あるいは野菜や果樹、花卉栽培の方が儲かると分かれば、自然に作物を転換します。特に小規模経営の場合、都市近郊型農業の方が穀物栽培より儲かるのは洋の東西を問わず事実です。そして、短期間に飛躍的に伸びた高速道路(高速公路)のトラック輸送や鉄道輸送が、遠隔地からの供給を可能にしています。

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しかし、それらを集め、分配する市場は遅れています。上海には2000万人以上の人口、つまり2000万個以上の胃袋がある訳ですが、その食糧を一か所に集めて市内に分配する中央市場に相当する機関がありません(済みません、私がいた10年以上前の知識ですから、今もそうなのかは分かりませんが)。

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ではどういう仕組みなのか?と言えば、小規模な市場が、住宅街のそこここにあり、近郊の農家から集まった食糧が、その地域の人たちに分配される仕組みです。地産地消を実践している訳ですが、小規模な市場が乱立することには、多くの問題があります。

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例えば衛生管理です。中国の小規模な生鮮食品の市場には衛生上の問題が多くあります。中国には生鮮食品は新鮮な方が良いという大原則があります。しばしば動物は生きたまま市場に運ばれ、そこで屠殺されます。鶏などは生きたまま籠に入れられて売買されます。鶏が羽ばたけば、埃が舞います。生きた動物はそのもの自体が汚染源です。その環境下で、21世紀の初めにSARSと呼ばれる新型肺炎(重症急性呼吸器症候群)が流行しました。発端は、広東の市場で売られていたハクビシンが感染源だったようですが、中国当局は明らかにしません。その後、トリインフルエンザも流行しました。感染は農場で始まったのでしょうが、それがパンデミックになったのは、市場で食い止めることができなかったからです。責任の一部は生鮮食品市場にあります。今、日本では豚コレラの流行が大問題になっていますが、これは多分中国から持ち込まれた豚肉が感染源でしょう。だって中国では日常的に豚コレラが発生していますから。

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中国政府は、SARSの時と同様、自国の病原体が原因とは認めないでしょうが、中国が衛生管理の面で遅れているのは事実です。繰り返しになりますが、家畜の伝染病を防ぐには、畜産農家の現場での防疫処理が大前提となりますが、遠距離への拡散を防ぐには、流通過程、特に市場での衛生管理が徹底的に重要になります。

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近代的な市場では、短時間に多くの競りを行い、集荷と出荷が能率よく行われることが重要ですが、併せて衛生管理が必須条件となります。今、東京の豊洲市場には海外からの観光客が多く訪れますが、彼らは見学通路から競りを眺め、その手際の良さと衛生的な環境に感心するそうです。逆に考えれば、外国の市場はそれだけ遅れているということでしょう。

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築地に魚市場があった頃は、無神経な観光客が競りの現場に踏み込み、指でマグロに触ったりして問題になったそうですが、これも自分達の国の市場はそれほど衛生的ではない・・ということでしょう。

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令和の時代、日本から外国に輸出するものは、これまでの工業製品から、目に見えないソフトに移行していくと私は考えます。その中の一つに、大都市で生鮮食品を扱う市場のシステムもあると私は考えます。とりわけ人口増大とスプロールが進む、アジアの大都市圏で、このノウハウは重要です。

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東京の魚市場の築地から豊洲への移転は、システムの近代化を実現するいい機会でしたが、政争の具にされてしまいました。その価値を議論する以前に、対抗する政治勢力が立案・企画したものだからとにかく反対しなくては・・とばかりに、地下の有害物質を発見して鬼の首を獲ったがごとく、プロジェクトを妨害しました。その影響もあってか、マスコミも豊洲市場については極めて冷淡です。

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しかし、新市場の良いところは良いところとして認め、それを世界に発信し、アジアの新しい大都市にも導入を促すことが、日本の行政の責任であり、マスコミの責任でもあります。東京の新しい市場が完成したからそれでいいや・・ということにはならないのです。

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アジアの国々の衛生問題は他人事ではありません。アジアから毎年一千万人以上の人々が、日本を訪れます。輸入品の検疫だけでは、疫病の防護壁としては全く不十分です。ここはおせっかいと言われても、アジアの大都市の市場の近代化、清潔化を応援するのが得策です。

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そして市場の問題は衛生管理だけではありません。市場を見れば、実に多くのことが分かります。大袈裟でなく、市場を見ればその街で暮らす人々の生活の全てが見通せると私は思います。

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だから読者諸兄の皆さまには、外国に行かれたら、その街の市場を訪問することをお勧めします。すると、そういうオヒョウはどうなのか?アジアではなくヨーロッパの事情はどうなのか?という質問が来そうです。

 

それについては、稿を改めてご紹介したいと思います。


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