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【 郭台銘(テリー・ゴウ)氏の錯覚 その2 】 [ビジネス]

【 郭台銘(テリー・ゴウ)氏の錯覚 その2 】

郭台銘氏が率いる鴻海ブランドの電気製品を街で見かけることは殆どありません。

それは、同社がEMSの会社だからです。 つまり他の企業が設計した図面や回路図を元に、その製品を、安く、大量に、高品質で、短納期で、顧客に納めることがなりわいです。 OEMで生産された電気製品は、その顧客のブランドで売られます。

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EMSのビジネスでは、できるだけ労働力が安くて豊富な国に大量生産の工場を確保して生産するのがコツです。他のEMS企業も概ね中国を狙い、新たな工場を建設したり、倒産した企業の工場を居抜きで買ったりしています。 つまりユニクロ型のビジネスの極致です。

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EMS産業が台頭してきた理由は、エレクトロニクス製品のコモディティ化が進んだことです。つまり半導体の設計図があれば、どの国の半導体製造ラインでも製造可能です。

そして、ユニット化したデバイスを組み合わせれば、パソコンだろうが液晶テレビだろうが、電気自動車だろうが、どこでも組み立てられるのです。

言ってみれば、電気製品の反ブランド化です。

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ところが、それに真っ向から反対し、全く逆の経営をした企業があります。町田氏や片山氏の頃のシャープがそれで、ブランド化こそ生きる道と考えました。日本製にこだわり、亀山モデルと称して高級な液晶テレビを売り出しました。 しかし、私は知っています。亀山モデルは工場こそ日本でしたが、実際に組み立て作業に従事していたのは南米からの出稼ぎ労働者で、日本語の平仮名も読めない人達でした。 シャープが消費者を欺いていたのはそれだけではありませんが、それはともかく「日本製だから高い値段を付けても売れる」という発想でした。

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液晶TVはやがて、世界中のどこでも組み立てて製品化できるコモディティ商品化していき、シャープのブランド強化作戦は裏目にでて、経営を圧迫していきました。

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鴻海が進めたEMSビジネス、つまり反ブランド主義が、シャープのブランド強化戦略に勝利した結果が、鴻海によるシャープの救済であり、子会社化です。

しかし、なぜ鴻海はシャープを救済したのでしょうか? EMSビジネスの一環であれば、鴻海は日本ではなく、開発途上国に工場を建てるはずです。鴻海の郭会長は、シャープの技術力を欲しかった・・というのですが、よく理解できません。 郭会長は1代で゙14兆円企業を作り上げた立志伝中の人物ですが、技術者として高等教育を受けた人ではありません。率直に言って、シャープの持つ技術力や研究開発力を適正に理解し評価する能力は無いはずです。 やはりEMSメーカーにはないブランド力を求めたのではないか?

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しかし、経営破綻したシャープのブランド価値はそれほどでもありません。 しかも優秀な技術者は、どんどん逃げていきます。郭会長は、混乱しそして迷った結果、途上国の組み立て工場と同じように、解雇のプレッシャーによって生産性を挙げるリストラ型経営を導入しようとしているようです。

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しかし、日本は特にシャープはベトナムの工場とは違います。 労働力が潤沢で代わりの人材が無尽蔵にいる世界ではありません。 特に研究開発に従事する社員は、評価点が下位10%だからという理由で解雇すべき人材ではありません。

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脱線しますが、その昔、勤務先の中央研究所が評価点方式で研究者を評価した事があります。単純に論文の本数や学会の発表件数を点数化したものですが、その結果、研究者達は目先の論文執筆に励み、肝心の研究をおろそかにしました。そればかりか、すぐに成果が出て論文に結び付く簡単な研究テーマばかりを選び、全体として会社の研究開発能力は大いに低下したのです。

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シャープで8Kなどの高精細度液晶パネルや、長寿命型有機ELの研究に携わる研究者に、点数制を導入したり、下位10%の解雇などを行えば、どうなるか?

所詮EMS屋には分からない問題が噴出します。おそらくシャープにまともな研究者はいなくなり、新技術の開発は滞るでしょう。 日本電産の永守氏は既にそのことを見抜いています。「安易な首切りは、(少なくとも日本では)下策中の下策だ・・」

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オヒョウが関係する鉄鋼産業も、海外に多くの子会社や合弁会社を持っています。そしていいことか悪いことかはともかく、人事・労務については国によって対応を変えています。一言で言えば、先進国であればなるべく雇用を大切に守り、新興国に於いては解雇権の行使もやむなしとしているのです。

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これまで、大陸中国をはじめ、東南アジアなど台湾より経済の遅れた国にしか工場を持たなかった鴻海には、理解できないことでしょうが、これは重要なことです。

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かつて、EMS産業を揶揄した人が言いました。

「鴻海には、i-Phoneは作れるけれど、i-Phoneは創れない」。安易な解雇権の濫用をすれば、創造的な仕事をできなくなる・・という意味です。 創造的な仕事は、失職の不安を抱えたままでは行えないのです。シャープのブランドと技術力を望みながら、それを得られないと知り、鴻海はきっと後悔します。 

ちょうど泳ぐ宝石のように水中できらめく熱帯魚を捕らえて、水上で死なせたなら、ただの白っぽい魚に変化するように、鴻海が買収したシャープは劣化します。

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もっとも、創造的な仕事を行う本家本元のアップルも、ジョブスの時代、理不尽な首切り旋風が吹き荒れましたが。


【 郭台銘(テリー・ゴウ)氏の錯覚 その1】 [ビジネス]

【 郭台銘(テリー・ゴウ)氏の錯覚 その1】

私がかつて暮らした中国江蘇省昆山市は、台湾企業の多い都市で、台湾塑料(台湾プラスチック)やGIANT(自転車)などの大きな工場があります。その中でも目立つのが富士康のパソコン工場でした。FOXCONなどと並ぶ、台湾の鴻海(ホンハイ)傘下の組立工場で、世界中に完成したパソコンを出荷していました。窓の無い大きな鉄筋コンクリートの建物の中に1万人もの従業員が勤務しています。

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中国人の同僚が「富士康では、時々自殺者が出るそうです」と言うので、「お給料もかなりいいそうだけれど、どうして?」と私。同僚は「富士康では、何も悪いことをしなくても、毎年成績下位10%の人が解雇されます。そしてその10%を埋める人が新たに採用されます。それは相当のストレスで、厳しい競争や足の引っ張り合いがあるそうです」

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「でも成績下位10%といっても、単に流れ作業で電気製品を組み立てるのだから、成績に差なんてつかないはずでは?」と私。同僚は「多分、欠勤とか遅刻とか・・・、従業員のレベルもそれなりに低いですしね。後は上役の受けの良さ・・とか、でしょう」

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「しかし、懲戒解雇の理由にもならないことで簡単に馘首されるなんて、労働基準法(中国にもそれなりにあります)や組合(中国にもそれなりにあります)はどうなっているのだ?」と私。同僚は「つまり代わりの人は、いくらでもいるから、要らない人はクビにするという雇用者側の論理が通用するのです」

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少し背景事情を言いますと、中国江蘇省昆山市はかなり近代化され、賃金水準も高い工業都市です。しかし、江蘇省のヒンターランドとも言うべき、西隣の安徽省、さらにその西の地域には、まだ貧しく近代化されていない世界が広がります。その地域から、仕事と都会の生活を求めて、毎年膨大な数の労働者がおしよせます。つまり、労働力は常に供給過剰の状態です。

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ノーベル経済学賞を受賞したルイス博士の、ルイスの法則では、「潤沢な労働力が供給される環境では、賃金や労働条件はあまり改善されない」としています。

なんのことはない。話は単純で「労働条件が嫌なら辞めな。代わりはいくらでもいるんだ」と雇用者が言える社会のことです。これを私は、酸アルカリの化学になぞらえて、「労働市場の緩衝溶液作用」と呼びます。

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「しかし、このやり方は、労働集約型の産業を、安い労働力が豊富にある地域に持ち込んで搾取する一種の植民地政策ではないですか?」と私。同僚は「そうです。昆山は既に経済面では台湾の植民地になっているのです。僕は日系企業にいて幸せです」

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幾らなんでも、悪いこともしていない人を、毎年自動的にクビにするなんてアコギな事は台湾企業でもしないだろうと、私は思っていました。しかし、富士康の親会社である鴻海(ホンハイ)の郭台銘会長はシャープでのリストラの可能性に言及し、「海外では毎年3~5%の人に辞めてもらっている」と語っています。昆山の話は本当だったのです。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1607/22/news060.html

どうやら、郭会長は、日本のシャープにもその方法を適用したいようです。「飼い主を替えても悪い卵しか産まない鶏は処分するしかない」という表現で、シャープ社員の定期的なリストラをしたい意向です。

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1606/29/news075.html

しかし、これはうまく行くか? 多分いかないでしょう。

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台湾企業が海外に工場を設置して成功する例は数多いのですが、その多くは開発途上国で、低賃金で豊富な労働力を持つ国に進出しています。

オヒョウが関わる鉄鋼の世界では、台湾のCSCがベトナムに複数の工場を建設し、黒字化を目指しています。

http://japanmetaldaily.com/metal/2016/steel_news_20160725_1.html

ベトナムは若年人口が非常に多く、かつ勤勉で優秀とされています。そこに期待しているのです。

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台湾国内では土地も労働人口も限られ、高コストだから海外へ進出するのですが、これはつまり、経済植民地化です。 言わば「ユニクロ型ビジネスモデル」です。

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しかしベトナムの労働者にも高いプライドがあります。そしてこれまで自分達の文化としてなじんできた仕事の仕方があります。 台湾流の押し付けが、自国と中国以外で果たして通用するか? かなり疑問です。

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ベトナムでも難しいのですが、まして日本のシャープでこの方法が通用するとは思えません。でも郭台銘氏は通用すると思っているようです。

その問題点について、次号で管見を述べます。


【 もっとリチウムを その2 】 [ビジネス]

【 もっとリチウムを その2 】

Li電池の将来が有望だという事で、多くの総合商社が、世界中でLiの鉱産資源の争奪戦を演じています。Li資源は 南米のボリビアやチリ、そして中国に偏在していますが、これには理由があります。

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アルカリ金属の炭酸化合物や水酸化化合物に共通の性質として低緯度の鹹湖(または乾燥した湖)に集中するのです。 ソーダ灰を求めて、フラミンゴの里であるアフリカのマガジ湖まで出かけた鉄鋼会社の技術者もいます。 

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そして、他の有用な金属と同様、中国に多く産する事から、中国による資源の囲い込みや独占の可能性を指摘する声があります。しかし、それは多分、錯覚か為にする議論です。即ち、中国脅威論を叫びたい人達、或いは近未来の中国がいかに大きな存在であるかを示して、中国に逆らうな・・と言いたい人達です。

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実際、レアアース(希土類)である、ネオジウムやサマリウムの資源が、中国に偏っていることは、日本のハイテク産業や高性能永久磁石製造に大きな影響を与えます。

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また希土類でなくても、重要な金属元素であるコバルト、モリブデン、ニオブ、タングステン・・・が中国では豊富に取れます。これらは鉄鋼の重要な合金成分であり、ハイテクだけでなく基幹産業にも欠かせません。20世紀の時代、製鉄所の人々は、それらの合金成分が高価なので、何時も溜息をついていました。

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Li電池の場合、電極の片方に使われるコバルトが品薄になり、価格が乱高下しました。投機の対象とされた訳で、その為に本当にコバルトを使う人はひどいとばっちりです。そう、コバルトは中国で多く採掘されます。

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だから、人々は、リチウムも中国に支配されたら・・と考えた訳ですが・・、でも何だか奇妙です。周期律表を見れば、分かりますが、Liは希土類ではありません。そして鉄属でもありません。アルカリ金属です。 そしてアルカリ金属は海水中に豊富にあります。

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現在、海水から抽出する方法で金属資源を回収し、それが商業ベースに乗っている元素は2つ。 ご存知ナトリウムとマグネシウムです。しかし、リチウムも技術的には海水からの回収は可能です。

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鹹水法というのは、つまり煮詰めた海水や湖水から回収する方法で、日本では万葉集の時代からおなじみの製塩方法の延長上にある技術です。要は、生産量がまとまれば採算にのり、海水からの回収ビジネスが成立する訳で、Li電池が大量に生産・消費する時代になれば、実現します。原料を海水に依存すれば、相場の変動にも悩まされず、諸外国の国策に利用される事もありません。 Li電池の価格を思い切って下げる為に必要なプロセスであると、オヒョウは考えます。

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そうするとどうなるか?ボリビアやチリでリチウム鉱山(といっても乾燥した湖)の採掘権を争って購入している三井物産、三菱商事、住友商事らはあてが外れてしまいます。 おそらくはLi電池ブームで、コバルトの価格高騰と調達困難があったからリチウムも・・・と思ったのでしょうが、両者は全く違う金属だという事を彼らは失念していないか?

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もし、リチウム(Li)が世の中に大量に出回ればどうなるか?

これまで使われなかった用途に大量に使える様になります。例えば、航空機材料です。

飛行機の材料の歴史は、より軽い金属(より比強度の高い金属)を求める歴史です。金属材料に限界を感じた人々は、炭素繊維系の複合材料に着目しましたが、それにも限界がありそうです。

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三菱MRJは、当初の設計では複合材料の比率を、かつてない程上げましたが、いつの間にか主翼や胴体下部の材料を軽合金に変更しています。 

三菱の技術者は「金属の方が、ぶつけた時の修理が簡単だから」という、弁解とも負け惜しみ・・とも言えるコメントを出していますが、ようは複合材料の限界が確認できたという事で、今後は金属と複合材料の棲み分け基準が明確になるでしょう。

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複合材料を金属に戻すのなら、なるべく軽い材料にしたい訳ですが、一番軽い金属はLiです。勿論、金属Liは金属Naと同じで、水に触れただけで、炎を出して水酸化物になってしまいます。 そこでアルミと合金化してAl-Li合金にすればいいのです。 オヒョウは同じようにラジカルな金属CaもAlと一緒にして、Ca-Alにすれば安定する事を製鉄所時代に学びました。 MRJでは使われませんが、将来の飛行機にはAl-Li合金の部品が増えるはずです。

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もうひとつの用途は、医薬品です。 特にLiは抗うつ剤として、著効があるそうです。 うつ病は、身体と精神の病であると同時に、社会環境がもたらす病気だそうです。 年間3万人もいる自殺者の何割がうつ病と関係があるかわかりませんが、自殺を社会問題として考え、それを減らす目標を、行政が持つのなら、Liを含む抗うつ剤の開発・製造を政府が後押しする事も必要かも知れません。

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「地球ができて130億年」とか「命を大切にする」とか、抽象的で無内容で、オヒョウにはチンプンカンプンだったのが、鳩山首相の施政方針演説です。

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でももし、鳩山首相が、本当に「命を大切にする」のなら、Li産業を振興すべきでしょう。

 (もっとも、Liは一方で人体に毒だという説もあるのですが・・・)

3510641

【 もっとリチウムを その1 】 [ビジネス]

【 もっとリチウムを その1 】 

以前のブログにも書きましたが、リチウムイオン電池(Li電池)とニッケル水素電池(Ni-H電池)の棲み分けがどうなるのか・・・という点に個人的な興味があります。それについて最近新たな動きがありました。

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関西電力は、出力が不安定な再生可能型エネルギー(平たく言えば、風力や、太陽光、波力や潮力)を平坦化するためのバッファーの電池にNi-H電池を使いました。http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/_tanso/_ta100203_2.html 

従来は、この種の電池としては、ナトリウム硫黄電池(NaS電池)やレドックスフロー電池が普通でしたから、これは画期的です。自動車用ではなく固定用電池として新たな需要が見込めます。

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一方自動車用としては、Li電池が主流になる事は間違いないみたいですが、その高価格がネックです。日経BP社の「Tech On!」誌には、 「Liイオン電池コストは2015年までに1/2~1/3へ」という見出しがありますが、精錬だけから考えると、このコスト低減は困難です。

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Li電池が世の中に溢れて、リサイクルやリユースが一般的になれば、その価格になる可能性がありますが、2015年ではまだそうなっていないと思われます。現時点では使用済みで回収されたLi電池の価値評価も定まっていない状況です。

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一方、新品のLi精錬コストとなると簡単には安くなりません。需要家サイドでは、需要が増えて生産規模が大きくなればスケールメリット(量産効果)でもっと安くなるはずだ・・と考えているでしょうが、そうはいきません。もしスケールメリットで議論できるなら、鉄鋼などは今の1/3の価格でもおかしくありません。なぜならLi精錬では電気代が重要なポイントになるとオヒョウは考えるからです。

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話が脱線しますが、かつてアルミの事を電気の缶詰と読んだ事があります。金属精錬では、電気代がいくら掛かるかが重要です。電力を猛烈に使用する金属精錬は、日本では成立しません。

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それにも関わらず、鉄鋼産業で成功したからアルミ精錬でも・・と考えたのは住友財閥の日向方斉氏ですが、それが大失敗に終わった事は日経新聞の私の履歴書に彼が白状しています。

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どういう金属元素で精錬に電気代がかかるか・・、簡単に言えば周期律表の左にいくほど、精錬に電気エネルギーを要する事になります。これは金属元素のイオン化傾向を学べば判る事で、高校2年生の化学です。アルミで電力を大量消費するなら、アルカリ土類金属やアルカリ金属では、それ以上に電力を消費するはずです。アルカリ金属の代表である、Liの精錬は高コストになります。

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具体的に主要な金属で比較してみましょう。        

・L: 2種類の精錬方法があります。i  

    (1)鹹水(かん水)法 

      使用エネルギー 413.7 GJ/Li-t  (内 電力 298.5 GJ/Li-t)

   (2)溶媒法/硫酸法 (中国法) 

    使用エネルギー  500.3 GJ/Li-t  (内 電力 258.9 GJ/Li-t)

※ 金属Li 1tonを精錬するのに必要なエネルギーは鹹水法の方が、少ない事になりますが、電力は多く使用します。でもこれは鉱石の品位にもよるので、一概に比較できません。

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他の元素では、金属1tonを精錬するのに必要なエネルギーは下記の通りです。

・Na   119.3 GJ/Na-t

・Mg    31.2 GJ/Mg-t

・Ti    165.2  GJ/Ti-t

となり、いずれも、Liに比べれば、ケタ違いに少ないエネルギーです。

Liこそが電気の缶詰であり、精錬にエネルギーが必要な金属です。

※ ここで、Tiは周期律表の左側の金属なのにNaのようなアルカリ金属より必要なエネルギーが大きいではないか! オヒョウの説明は不正確だ! 

などと言わないでください。 Tiを精錬する際は、最初にMgを精錬して、それを犠牲にして、Tiを還元して精製する方法がとられます。だから、Tiの精錬にはエネルギーが必要であり、そのコストも高いのです。

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電気を貯め、省エネにも役立つはずのLi電池ですが、その製造に莫大なエネルギーが必要となるのは、皮肉な事です。そして重要な事です。

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今、多くの商社がLiの鉱産資源を求めて、世界中で買い占めにかかっていますが、本当に問題なのは、鉱石の確保ではなく、エネルギー価格が低廉な土地を探して、そこで精錬するという事です。 

そのあたりについては、次回ご報告します。

3510643

【 Tさんの賭け 】 [ビジネス]

【 Tさんの賭け 】 

東京モーターショーの案内を見てか、同僚のKさんが言いました。

「 今は、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HV)が大流行ですね。ほんの2,3年前と比べるとさま変わりですよ。うちも今度買う時はHV  EVになるかも知れません 」

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たしかにその通りだと、オヒョウも思います。ここ2,3年でさま変わりしたのは、多分、下記の6項目が理由です。

1.昨年夏のガソリン価格の高騰により、低燃費車への関心が高まった。

2.政府による補助金や減税等の、エコカーへの買い換え促進策やカルフォオルニアの厳しい排ガス規制などが影響。

3.自動車業界の守旧派と言うべき、米国のビッグ3が不振になり、エコカーに意欲的な会社の地位が相対的に浮上した。

4.電池や電気走行システムの技術が改善され、性能向上と  同時に安定し、かつ価格も下がった。

5.昨年後半以降の急激な景気悪化と自動車の販売落ち込みで  従来型の自動車を売っているだけでは限界があると  メーカーが自覚した。

6.消費者が、環境保全や地球温暖化防止について、関心を持ち  その重要性を認識した。

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もっとも、6については、手元に資料が無く、オヒョウの推測に過ぎませんが・・。そして、オヒョウが着目したのは、新型のトヨタプリウスもニッケル水素電池を採用している事です。

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かつて初代プリウスが登場した頃から、トヨタはHVにニッケル水素電池を使用しました。 一方、日産はリチウムイオン電池を用いたHVを研究していましたが、HVの重要性を理解できなかったゴーン社長は、研究を終了させました。

当時、トヨタのある部長と話したオヒョウが

「プリウスは画期的な自動車ですね」とお世辞を言うと、彼は

「本当にプリウスの技術が優れているかは分かりませんよ。電池の選択もニッケル水素が正しかったかどうかは、まだ分かりません。それに、コスト的に見て赤字なので、プリウスが成功作かどうかは微妙です」と語りました。 

トヨタ社内にも、ニッケル水素派とリチウムイオン派の両方が存在した事は間違いないようです。

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ニッケル水素と、リチウムイオンの比較は、これまでにも書きましたが、自動車用として考えた場合、下記の通りです。

<ニッケル水素の利点>

1.リチウムイオンより安価。特に、電極に高価なコバルトなどを使用しない。

2.爆発や自然発火、熱暴走の危険が無い。

<リチウムイオンの利点>

1.蓄積できるエネルギー密度が、ニッケル水素の1.52倍と大きい。

2.メモリー効果がない。

3.自己放電によるロスが少ない。

4.充放電時の体積変化がなく長期間使用してもボロボロにならない。

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単純に比較すると、リチウムイオンの方が優っていますが、トヨタはまだニッケル水素に拘っています。そこで、オヒョウは2年前の事を思い出しました・・・・。

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もう2年前ですから・・・時効でしょうか。

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オヒョウが新人の時に、仕事のイロハを教わったTさんは、某合金鉄メーカーの重役です。そのTさんが直江津に来られて、オヒョウともう一人の教え子Yさんが、Tさんにごちそうになったのです。

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3人にとって久闊を叙すいい機会でしたが、Tさんには別の目的がありました。 オヒョウではないもう一人の教え子Yさんを自社に招き、ご自分が考えるプロジェクトを進める片腕とし、やがて引き継いで貰う事を提案しに来られたのです。

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当時、その合金鉄の会社には、問題がありました。製鉄副原料である合金鉄の製造は、一種の構造不況業種でした。同社では、水素吸蔵合金や二次電池用のニッケル製造もしていましたが、製品価格の下落で利益がでにくい状況にありました。 そして同社が持つ新潟県の製造所も、体質改善をしなければ存続が厳しい状況でした。(これは、秘密でも何でもなく、IR情報として公開されている情報です)。

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素材産業に於いて、製品価格が低迷し、赤字脱出が難しい場合、対策は3つしかありません。

1.他社の事業をバイアウトしたり、新規用途を開拓して新市場を築くなどの対策で、事業規模の拡大を図る。そしてスケールメリットによって、販売単価が低くても、損益分岐点を上回るようにする。

2.販売価格を維持しやすい、高付加価値品や、高性能品に特化して、利益を拡大する。

3.事業を縮小・分離、または撤退する。

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Tさんが選んだのは1です。 具体的には、ニッケル水素電池用のニッケル製造に賭けてニッケル事業の黒字化と新潟県の事業所の黒字化を一挙に実現しようというプランです。 同社の新しい社長が、Tさんのそのプランを評価しゴーサインが出たのがきっかけという訳です。

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具体的に何をするか・・・は、企業秘密でしたが、Tさんの口調から考えて、トヨタのHV用の電池需要を念頭に置いている事は明らかでした。ご本人もエスティマHVを愛車にされています。

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しかし、そこで部外者のオヒョウは疑問に思いました。オヒョウは、金属についても、電気化学についても無知ですが、20年間ノートパソコンのユーザーであり、二次電池には一家言を持っている積もりです。 20年前の東芝のノートパソコンはニッケル水素電池でした。それがportegeになった時に、リチウムイオン電池になり、一挙に小型軽量で高性能になった事を憶えています。

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ロンドンで携帯電話を買った時、同僚のエリクソン製携帯がニッケル水素電池だったのに、私が買ったノキア製がリチウムイオン電池で遙かに高性能だったのも良く憶えています。 

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明らかにリチウムイオン電池の方が優れています。モバイルや電子機器類では、もはやリチウムイオン電池がヘゲモニーを持っており、今更ニッケル水素の出番は無いとオヒョウには思えました。

だから、オヒョウは、酔った勢いでTさんに尋ねました。

「 HV用途でも、ニッケル水素電池はリチウムイオン電池に適わないのではないですか?それにリチウムイオンの欠点だった高価格についても、コバルト電極ではなく安価なマンガン系電極で代替できる可能性がでてきたし、爆発や発火の問題も、セル毎にコンピューター制御すれば、解決できます。一方、ニッケル水素の方は、メモリー効果や体積変化と脆化の問題が未解決です。」

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それに対して、Tさんは(その質問には何百回も答えてきた・・)という風に、慣れた口調で、疑問に一つ一つ回答されました。

「 ニッケル水素のメモリー効果や体積膨張の問題は、既に解決した。充放電を適切に制御すれば良い。 一方、リチウムイオンの爆発発火の問題は未解決だ。セル毎にコンピューター制御するなんて事は現実問題として難しい。 自動車メーカーは、万一にも不具合が生じて、事故が起こって信用問題になる事を恐れる。 それに高額なHVが普及した後でリコール騒動にでもなれば、それこそ経営を傾ける事になる。だから、彼らは多分、今後もニッケル水素電池を使い続ける」と自信たっぷりに言われました。

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誘われたYさんは、当時、自分が指揮していた新技術・新製品の実用化にこだわりがあり、結局Tさんの誘いを受けませんでした。

でも、それ以外は、全てTさんの考え通りに進んでいます。

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最近の発表に拠れば、合金鉄メーカーは、親会社である製鉄会社の電池用ニッケル事業を引き取って集約し、同時に新潟県の事業所の生産規模を1.5倍~2倍に拡大します。 そして新型プリウスの技術解説資料には、メモリー効果を防止するために、充放電を繰り返す範囲を詳しく規定しています。Tさんは賭けに勝ったのです。

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でも、オヒョウは今でも思うのです。やはりニッケル水素電池は過渡的な存在ではなかろうか?将来、HVではなくプラグイン型のEVが主流になった時、重量と容積の問題からニッケル水素電池では、対応できなくなるとオヒョウは考えます。 その時は、リチウムイオン電池かリチウムイオンキャパシタが主流になるのでは?その疑問を、少し以前に、合金鉄メーカーのUさんに、ぶつけるとUさんは、「 我々にはリチウムを製造しろと言われれば、それに対応できるだけのポテンシャルはある。だから仮にニッケルがだめになったとしても事業が沈没する事は無いのです 」との回答です。さて、どうなるのか?同じ席にいたYさんは、何も言いません。 Yさんは新製品の開発に成功して販売を開始し、同時に取締役に就任しました。

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多くの事柄は、技術者の予測通りに、順調に進んでいます。でも分からない事もあります。オヒョウがこの次に自動車を買い換える時に、普通の内燃機関の車にするか、HVにするか、或いはHVだとしてもどんな電池を使うのか・・、私自身にも分かりません。 だいたい今の車があと何年持つか・・それも定かではないのです。


【 アジア共通通貨の夢 その2 】 [ビジネス]

【 アジア共通通貨の夢 その2 】

 ユーロを導入する際、参加国には厳しい宿題・・というか条件が課されました。

収斂基準とかマーストリヒト基準とか言われますが、ユーロの仲間に入るには財政が健全で、物価が安定し、為替相場も安定し、長期金利も一定範囲内にある事が条件です。 

細かい説明は省きますが、特に財政の健全化については、新規国債の発行額がGDP3%以下という条件があり、多くの国にとって最大のハードルとなりました。中には夏休みの宿題のように、期限ギリギリになってクリアーした国もあります。 ユーロ発行に乗り遅れない為に、慌ててユーロ導入税を設けて、財政健全化を進めた国もあります。 国民にとっては増税であり、痛みを伴って手に入れたユーロです。

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突飛な例えですが、ユーロ圏に入るという事は・・・日本でプロの将棋指しが仲間内の勉強会に入る事に似ています。 勉強会に入れば、自分の棋力が上がり得しますが、そもそも一定以上の実力が無ければ入れて貰えません。 その結果、強い者はより強くなり、弱い者はそのままです。

オヒョウがいた頃の英国では結局マーストリヒト条約が批准されませんでした。その頃、英国はユーロへの参加を検討していたのですが、実現しなかったのです。 理由はかなり複雑ですが、その頃ヘッジファンドが英国ポンドを売り浴びせ、短期間に英国の膨大な富を奪う・・という事件がありました。オヒョウはそれがきっかけで、ユーロへの参加を断念したのだと思います。 メージャー首相(当時)はそれで国民の信を失いました。

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アジアではどうでしょうか?東南アジアの通貨危機の際、同じようにヘッジファンドがタイバーツなどを売り浴びせて経済危機をもたらし、その復興には長期間を要しました。 ACUやAMFが設立されれば、それらの災難を防止できますが、ACUを導入する各国に、それを支える力があるか不明です。

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アジアの主要国が収斂基準を満たしているか・・・考えます。

まず、経済危機に何度も見舞われ、IMFに救済されている韓国は、財政の健全性でOUTです。 

日本も現在の経済状況から考えて、新規国債をGDP3%以内にする事は無理で、OUTです。

そして外貨準備高も経済成長率も立派な中国ですが、基準に照らし合わせると、物価上昇率でひっかかるでしょう (物価が最も安定した3カ国の平均に対して、+1.5%以上の上昇率だとOUTです)。 経済成長率も他の国に対して高すぎるとOUTです。

つまりユーロの導入基準で考えた場合、アジアの主要国が軒並みひっかかるのです。 これでは共通通貨は成り立ちません。 

20世紀後半以降、アジア諸国は「アフリカよりましなアジア」から「欧州と肩を並べるアジア」に脱皮しようとしていますが、共通通貨に付いては時期尚早だとオヒョウは思います。 

将棋の奨励会員が集まって勉強会をしても、A級八段の勉強会にはなりえないのと同じです。 

鳩山首相が、友愛精神の元に、経済面でのアジア共同体を目指すのは結構ですが、通貨の統一については熟慮が必要です。幸いにして、通貨政策に取り組む藤井財務相が顧問として迎える行天豊雄氏はこの分野の第一人者だそうです。 彼等がうまくコントロールし、政府が慌てて中国の誘いに乗らない事を期待します。 外国にはええかっこをして、国民には負担を強いるというのはCO2削減だけで結構ですから。

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【 アジア共通通貨の夢 その1 】 [ビジネス]

【 アジア共通通貨の夢 その1 】 

鳩山論文なるものが、世界中に流れ、反響を呼んでいるそうです。著作権者の鳩山首相の了解を得ずに、複数の人がそれを引用してレポートを書いている事に本人は懸念を表明していますが、自然科学の研究者だった人の弁とも思えません。 

論文のオリジナルを掲載し、版権を持つ「Voice」は既に翻訳を許可しており、その英語版がインターネットに流れたのなら、不特定多数が読むのは当然予想されることであり、「勝手に読んで引用したな・・」というクレームは通用しません。

勿論、誤訳や曲解、中身の改変があればクレームすべきですが、そうでなければ、むしろ「引用してくれてありがとう」というのが、論文執筆者のスタイルです。 

なるべく多くの人に読んで理解して貰いたい・・と思って書くのが論文であり、政治家のメッセージも同じです。いえ、学術論文だけでなく、私のブログだって引用して頂ければありがたいと・・・思います。

・・・・・・

その鳩山論文に気になる点が幾つかあります。一つは、アジア共通通貨ACUの提唱です。 

オヒョウは、かつて20世紀末に欧州が共通通貨ユーロを確立する過程で苦労するのを見ていますから(といっても、たまたまその頃、欧州に暮らしていただけですが)、それが簡単でないのを知っています。 

率直に言って、今のアジアでは、全く無理です。 

おそらく鳩山首相が提案するACUは、中国の胡錦濤が提案する共通通貨の案に迎合するものだと思いますが、それ自体杜撰で危険な発想です。 

以下に、その問題点を挙げます。 

どの通貨を中心にすえ、どの国がイニシアチブを取るか・・・。 共通通貨といっても、実は元になる安定した複数の通貨が必要です。欧州の場合、ユーロの前に通貨バスケット制のECUを設定していますが、EUのドイツマルクとフランスフラン、イタリアリラが中心でした。

しかし、変動相場制の中でドイツマルクは常に強く、フランやリラとのバランスが取れません。 ドイツ経済自体が好調という事もありますが、ドイツ中央銀行の宿阿であるインフレへの恐怖から、ドイツマルクの価値を常に高く維持する政策を取っていたからです。

それが、東西ドイツの融合により、旧西ドイツの経済は悪化しました。統一ドイツは、旧東側のインフラ整備にお金がかかり、失業者も増えたために、マルクの力は衰えたのです。

それで英国ポンドを除く欧州主要各国の通貨のバランスが取れ、ECUが実現したのだと、オヒョウは思います。 ドイツ経済の失速が原因という怪我の功名です。

翻ってアジアの場合、土台となるEU(その前はEEC)にあたる経済共同体もありません。 ASEANは一部しかカバーしません。そして、どの通貨が中心になって通貨バスケットを設けるか・・・となれば、ASEANではない日本円と中国の人民元が中心になるでしょうが、両者は全く性格が異なります。 

人民元は、基本的にドルペッグであり米ドルのコバンザメです。中国経済が順調で成長しているのは、この恣意的な為替相場のお陰であり、もしニクソンショックの様な事態になって、人民元が切り上げられれば、中国の景気は一挙に悪化するでしょう。 

そして中国は、実態は自由経済に近いのですが、共産主義を標榜し、計画経済を掲げています。政府は自由主義国とは違う形で経済に介入します。 この国の通貨が通貨バスケットの中心になりうるか・・?はなはだ疑問です。 

第一、人民元は、つい最近まで他国通貨と自由に交換できるハードカレンシーでさえなかったのです。そもそも中国は、本当の意味でのアジアの共通通貨設立を目指すのではなく、人民元がアジアの基軸通貨になる事を目指しています。

最近までハードカレンシーでなかった・・・つまり国外に出れば保証の無い紙屑になった人民元がいきなり基軸通貨・・とはちょっと変ですが、短期間に中国経済の規模がそれだけ拡大したという事です。 

かつて日本がIMFのアジア版であるAMF(アジア通貨基金)を設立しようした時、中国は反対しました。 当時、中国のGDPは日本のそれより小さく、AMFを設立すれば日本にイニシアチブを取られると思ったからです。 その中国のGDPが日本のそれに並んだ時点で、胡錦濤は共通通貨(ACU)を提案してきました。 

AMFACUの設立趣旨には共通した部分があり、中国が前者に反対し、後者を提案するのは理屈が通りません。 要は日本が主人公では困る。自分が主人公になりたいという事です。  

今年中国のGDPは日本を抜き、世界2位になります。このままでは、米国から人民元の切り上げ圧力が高まる事は必至であり、中国としては人民元からACUに切り換える事で、その圧力をかわしたい狙いもあるでしょう。

アジア共有通貨ACUを現時点で作る事は中国を特に利する事になりますが、 それに鳩山氏が乗る・・というのは、友愛精神というより、おっちょこちょいというべき行為です。 

日本と中国が同床異夢の中で、提案するアジア共通通貨ですが、解決すべき課題、越えるべきハードルはたくさんあります。それを理解した上で鳩山首相が論文を書いたかは不明ですが、次号で、オヒョウの(偏った)見解を述べます。


【 産業を嫌う行政 その3 】 [ビジネス]

【 産業を嫌う行政 その3 】

 民主党の代表、つまり次期首相が理科系の学問を専攻したことから、理科系の宰相として、従来の宰相とは異なる能力を発揮するのではないか?・・という声がありますが、オヒョウは「そりゃ政治手腕・行政手腕とは関係ないでしょ」と思います。

ただ自然科学系のこみ入った問題を部下から説明された時の理解は早いかも知れません。

具体的には科学技術開発問題や環境問題が対象ですが、全てを自分で判断する訳ではなさそうです。今回のCO2削減目標の設定に当たって、鳩山氏が自ら計算・確認して25%という数字を出したものとは思えません。

CO2を削減する具体策を、全て列挙し、その効果を積算して削減可能な値を出す積み上げ方式ではなく、始めに目標値ありき・・だからです。 しかし、根拠無しにデタラメの数字を世界に対して公言していいのか・・という事になります。

おそらく、民主党としては、「そう言うけれど、自民党の頃だってそうじゃないか。科学的に検討して決めた事柄なんて殆ど無いぜ」と論点をずらすかも知れません。 

そして、自民党も民主党も、最後の手段を考えます。

「 ゴタゴタしたら金で解決すればいいだろう 」 そう、CO2削減プロジェクトの、一番胡散臭いところは、最後は排出権取引という形で、お金で解決できる事です。

・・・・・・・・

下品な表現ですが、世の中には、たかる国とたかられる国があります。第二次大戦後、一貫して途上国や低開発国は先進国からお金や物資の援助を受けてきました。

多くの途上国の政治リーダーは、どこかの先進国または大国とコネを持ち、そこからお金を引き出す事で、権威を保ってきました。しかしその事で、援助は貰いっぱなし、借金は返さない・・・それでいていっこうに国は豊かにならない・・というモラルハザードを引き起こしてきたのも事実です。 

それらの集大成というか締めくくりが、CO2排出権取引です。 

以下、言葉は悪いですが・・・、これによって、発展してこなかった国(換言すれば怠けていた国)が、濡れ手で粟の大金をせしめる事ができるのです。しかも、先進国に文句を言い、被害者面で振る舞う事ができるのです。

・・・・・・・

日本の場合、第二次大戦とその前の植民地経営の事情から、一貫してアジア諸国に償いをする立場でした。しかし、戦争後60年以上が経過し、そろそろ、戦前と戦中の行為を理由に日本からお金を引き出すのが難しくなってきました。 

そこで新たにお金を巻き上げる手段として、CO2排出権取引が登場する訳です。 この取引は、アジア諸国にとって、単にお金が貰えるだけでなく、砂漠を緑化してもらったり、再生可能なエネルギーの技術を無償供与してもらったり、いいことずくめです。

・・・・・

そして、友愛を旗印に掲げる、民主党政権は、アジア周辺諸国にひたすら迎合し、事をあらだてない事を旨にします。 

余談ですが・・・・、鳩山の掲げる友愛の意味がよく分かりません。フランス革命で謳われた「自由・平等・博愛」の内、最後の「博愛」は誤訳で実は「友愛」だという人がいます。 全ての人を博く愛するのではなく、友だけを大切にし、敵(反革命勢力)を愛さないのが、友愛だとしたら、鳩山にとって友は誰か、敵は誰か?という事になります。そして、友とはアジア周辺諸国、敵とは米国ではないか?と米国の人々は心配しています。

・・・・

話を元へ戻しますが、CO2排出削減目標で、国家間に極端な差を設け、得する国と損する国を明瞭に分けたのは、京都議定書からです。その際、一番損をする立場に追い込まれたのに、嬉々として署名したのは、ええかっこしいの日本です。 鳩山民主党政権は、外国に嫌われず波風を立てない事を第一に考えますから、今回もマイナス25%という数字を示して、外国から驚嘆されるでしょう。 しかし、諸外国は日本を尊敬するのではなく、実は呆れてバカにするのでしょうが・・・。

そして、日本の産業界と、負担を強いられる国民は、再びええかっこしいの犠牲になります。 どうやら日本の産業界は少なくとも、鳩山の友愛の対象ではないようです。


【 産業を嫌う行政 その1 】 [ビジネス]

【 産業を嫌う行政 その1 】 

民主党の公約である、消費税率の4年間据え置き、児童手当の支給、ガソリンの暫定是率の廃止、最低賃金の引き上げ、インド洋の給油の不延長、高速道路の無料化、等々について腑に落ちない点があります。 

彼等がそれらを真面目に考えて、実現可能と確認して提言したのか、それとも選挙対策で口からでまかせで言ったものかを検証する必要があります。

それを判断する一つのポイントは、CO2削減目標のマイナス25%という数値です。

既に、他のブログで申し上げましたが、民主党のマイナス25%という数字は実現可能な対策の効果を積み上げて計算したものではなく、自民党が提示した数値が、諸外国に対して恥ずかしいものだから、格好いい数字を口にした・・・というものです。

これは非常に危険な手法です。 政治や行政は見栄やかっこうよさを気にして行ってはいけません。 特に外国に対するコミットメントは、まじめに検討した結果を基に行うべきで、つまらない言質を相手に与えると、国が信用を失うか、または国民が過大な負担を負う事になります。

これについては、別稿で考えてみたいと思います。

・・・・・

環境対策の目標に検討なしの数値を持ち出してくるなら、財政の問題も精査された数値を基に公約を発表しているとは、とても思えません。 消費税率は上げない。高速道路は無料化します。児童手当は出します。年金は保証します。という公約に対して「財源はどうするか?」と訊かれて「予算の無駄を省いて捻出します・・」という回答では全く不安です。

無駄を省いて・・というのは小学生でも言える説明ですが、具体性に欠ける説明を信用する事はできません。

ひょっとして、日本国民は野党の毛針にひっかかってしまったのか・・・。

(特別国会以降は、彼等は与党ですが・・)。 

耳障りのいいバラ色の内容を並べた、民主党の公約ですが、実は一貫している点が一つあります。 それは「産業経済を憎む」という思想です。

 どういう事か・・と言えば、

1. 公約には経済成長に対しての記述がなく、目標値も、経済成長を促すための施策についての記述もありません。実はCO2の削減目標と経済の成長目標の間には密接な相関があり、経済成長率によって、CO2の排出量は大きく変わります。換言すれば、経済成長の見通しなしにCO2排出量の見通しは立たないのですが、これには言及していません。これはCO2削減目標の根拠が無いことを意味します。 そして経済成長を促す為、或いは産業を振興する為の具体的な施策もありません。 グリーン何とか・・と言い、環境関連の産業が発展するだろうと予測していますが、政治的メッセージをよく分からないカタカナで表現する時は、無内容であるのが一般的です。 

2.経済成長を考える時は為替相場や貿易収支なども重要なポイントですが、これについての具体的な記述がありません。 輸出依存型から内需拡大型へ経済を切り換えて、米国経済の乱調に振り回されない・・という方針らしいですが、そんな事は当たり前の事でプラザ合意以降の自民党も言っています。中国の様に、為替相場を管理し、国際競争力を維持するためのしたたかな施策には興味が無いようです。 

3.最低賃金を上げ、一方で雇用を守り、非正規雇用を禁止する方針は一つの思想として評価できますが、実行には困難を伴います。これは、企業収益の労働分配率が低下し、資本家側だけが儲かっている時、或いは阿漕な儲け方をする悪徳企業がはびこっている時には、意味を持ちます。 そして景気がいい時や経済成長が続く時には、この政策は意味を持ちます。 もっと言えば、今の中国こそ、最低賃金や雇用を保証し、勤労者の人権を守る必要があるのですが、日本では微妙です。不況で苦しい零細企業に最低賃金のアップと非正規雇用の正規化を求めれば、倒産するか、海外に逃げ出すだけです。 

4.そして産業界にとって、極めて重要な意味を持つのはCO2排出量の削減目標です。これは一部の製造業にとっては「日本から出ていけ」という事と同じ意味です。 民主党の政策には産業経済を育成するのではなく、押さえつけようとする意図が伺えます。

・・・・・・・

製造業を嫌い、工場を締め出そうという考えは、常に一部の人にありますが、多数派にはなりませんし、それが実行される事も希です。

しかし、過去に実際に実行された例をオヒョウは知っています。それは米国のカリフォルニア州の例です。 その内容と悲惨な結果については次号で述べます。

 


【 ただいま充電中 】 [ビジネス]

【 ただいま充電中 】 

少し昔ですが、会社勤めを辞めて親の介護と晴耕雨読の日々に入った頃の川崎のご隠居から届いた手紙には

「ただいま充電中・・と言いたいところですが、実は放電しっぱなしです」と

書いてありました。 彼の例はともかく、今、日本はかつてない程、失業率が高くなり「充電中」の人々が増えてきています。 これは重大な社会現象というか問題です。

・・・・・・

そして、それとは別の意味で、これから「充電」が社会のキーワードになるとオヒョウは思います。

それは二次電池(昔は蓄電池と言いました)の充電設備をどうするかがインフラ整備の鍵だからです。

・・・・向こう10年の間に、電気自動車(EV)や、プラグインの充電が可能なハイブリッドカーの比率はかなり高まるでしょう。そして、ガソリンスタンドに代わる、電気スタンド・・・ではなくエネルギースタンドまたは、充電スタンド、電池交換ショップが広く普及するはずです。 

しかし、そうはならない・・という人もいます。電気のコードを繋いで充電するだけなら、ガソリンスタンド型の大規模なインフラはいらないからです。家庭のコンセントでもいいし、駐車場に併設してもいいではないか・・・。

実際、駐車中に充電する場合が一般的でしょうから、これは当然の意見です。

「オヒョウ君、駐車場に電気のコンセントがあるなんてのは当たり前だよ」と語るのはフィンランド駐在をしたこともある、Oさんです。今、中国で工場の総経理をしているOさんは、北欧での駐車場事情を語ります。

「 朝、寒さの為に、屋外駐車の自動車のバッテリーは使えなくなっている。だから、コンセントから電気を取って、セルモーターを回すのさ」

フィンランドやスェーデンにはオヒョウも何度か行った事があります。確かに駐車場には電気のコンセントがあり、不思議に思いました。 だから電圧を何ボルトにするか・・とか急速充電可能にすべきか・・という問題はあるけれど、EVやプラグインハイブリッドの充電設備の問題は大きくないよ・・という意見には説得力があります。

・・・・・

でも、オヒョウが考えるのは、別の問題です。今、日本では、夜間需要が少ない為、夜間電力を安く設定しています。 もし電力需要の相当分が、リアルタイムで消費しない充電用(つまり、時間的に融通の利く電力)になるとしたら、事情は変わります。 当然、EVの充電は最も電力料金の安い時間帯を狙いますから、電力需要のピークは大きく変化します。最終的には24時間を通じて電力需要は一定になるかも知れません。

そうなると、揚水発電所も不要になります。

膨大な数のEVやハイブリッドカーの電池が、揚水発電所の役割を肩代わりしてくれるからです。そして、ピーク対応を前提に考えた発電設備の能力にも余裕ができます。

・・・・・・・

でも話は、単純ではありません。電力料金には、ガソリン価格と同様に地域差があります。 充電は北陸地方でするのが得で、関東地方で充電すると損だ・・・とか、多くの調整すべき事柄がでてきます。 太陽光発電や風力発電の、不安定で密度の低い電力も、EVの充電用に上手に用いれば無駄がなくなりますが、うまく使えるかは不明です。 

・・・・・

電力売買の問題や混乱も生じます。電力会社は家庭で発電した太陽光発電の電力を市場価格より高く買い上げる予定ですから、二次電池を使えば、その逆ざやを使って、儲ける事もできます。つまり、電力会社から購入した電力を蓄え、時間差を置いて、ソーラーパネルで自家発電した電力として、電力会社に販売する事ができるのです。 おそらく、その行為は違法でしょうが、ソーラーパネルの電気も電力会社の電力も、同じ二次電池に入れてしまえば、区別できません。一物一価でない電力をドンブリ勘定する事になれば、混乱が生じます。二次電池がなければ、そんな芸当はできませんが、購入した電力を蓄える、または時間差を置いて消費する事が可能なら、いろいろな選択肢ができます。(実際には充放電時のロスを考えれば、非現実的ですが)。

・・・・・

そもそも、需要家側に二次電池があるという事は何を意味するのでしょう?エネルギーに限りませんが、供給側に時間的な融通が利かず、需要側に時間的な融通が利くというのは、流通経済では珍しい事です。その場合、どんな現象が起きるのでしょうか?

・・・・・・

供給側では、再生可能エネルギー(太陽光とか風力)での発電比率が増えれば、電力発生量のコントロールが難しくなります。お日様が顔を出せば、あるいは風が吹けば、たちまち発電量は増えて、供給過剰になります。 一方、需要側には余裕があります。電力価格は時々刻々変化する相場を形成し、買い手は電気が安値になるのを待って、一斉に二次電池に充電する事になります。電力料金の乱高下を利用したデイトレーダーみたいな商売も可能になるかも知れません。

・・・・・・

電池ではない人間の充電はより重要ですが、もっと難しいです。オヒョウの勤務先には、某大企業を早期退職し、母校の大学院に入って修士号を取得してから入社してきた人もいます。

しかし、誰もが適切に充放電できるとは限りませんし、うまくいかない場合もあります。

過充電や過放電でだめになるのは、電池だけではありません。 今、日本中で静かに充電している多くの有為の人々に、活躍の機会があれば・・・、コンデンサーの放電でストロボが光る様に、あるいはレーザー光線が発振する様に、日本経済には強烈な光が当たるのですが、今度の新政権に、そんな芸当ができるか・・・・、オヒョウには判りません。


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